新型コロナウイルスは病院の収入を大幅に減少させ、利益率を大きく低下させ、病院経営に大打撃を与えていることが明らかになった。さらに、手術件数の減少、救急患者の受入件数の減少といった病院機能の低下にもつながっている。
日本病院会、日本医療法人協会、全日本病院協会は5月18日、「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」の結果を発表した。同調査は、5月7日~15日に4332病院を対象として調査。有効回答数1141病院だった。同調査によると、2020年4月時点の収入は前年同月比10.5%の減少、利益率は2019年4月時点がプラス1.0%だったのに対してマイナス9.0%となり、10パーセントポイントも悪化、赤字に陥っている(有効回答病院数:1049病院)。
この傾向は13の特定警戒都道府県(北海道、茨城、千葉、東京、埼玉、神奈川、愛知、岐阜、石川、大阪、京都、兵庫、福岡)、8の特定警戒都道府県(北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫)、コロナ患者入院受入病院、一時的病棟閉鎖病院で大きくなっている。各々の収入、利益率の状況は以下の通り。
<2020年4月時点の前年同月比状況>
医業収入 医業利益率
13の特定警戒都道府県(589病院) -12.5% -11.6%
8の特定警戒都道府県(413病院) -13.8% -12.6%
コロナ患者入院受入病院(269病院) -12.7% -11.8%
一時的病棟閉鎖病院(146病院) -14.9% -16.0%
収入減、利益率の減少は外来患者数の減少に如実に現れている。1134病院の2~4月の外来患者延数は、2019年は2月が7979人、3月が8582人、4月が8518人だったのに対して、2020年は2月が7644人、3月が7993人と減少傾向をたどり、4月にはついに7000人を割り込み、6841人にまで減少した。これは、2019年4月の初診患者が919人だったのに対して、2020年4月は532人と約42%も減少していることにも表れている。
この傾向は収入や利益率と同様に、なかでも特定警戒都道府県の病院、コロナ患者入院受入病院、一時的病棟閉鎖病院で外来患者の大幅な減少につながっている。例えば8の特定警戒都道府県(451病院)では4月の初診患者が前年同月比で約48%も減少している。
都内大手病院では、「新型コロナウイルス感染患者が来院するかもしれないという見方や、新型コロナウイルスの診察を行っていることで、外来患者が減少した。また、外来診療を中止した病院の影響も大きい」との見方をしている。
手術件数や救急患者の受入件数も減少
こうした病院機能の低下は、手術件数や救急患者の受入件数にも影響を及ぼしている。手術件数は全病院(1141病院)で4月には前年同月比で約18%減少した。特に一時的病棟閉鎖を行った病院(156病院)では、同約23%の減少となっている。
救急患者は全病院での受入件数が4月には前年同月比約35%減(うち、救急車受入件数約23%減)となった。特に一時的病棟閉鎖を行った病院では同約39%減(同約28%減)となっており、救急患者を受け入れる能力が大幅に低下したことがわかる。
政府は新型コロナウイルス感染患者の入院を受け入れた病院や医療従事者に対して、診療報酬上のさまざまな配慮を行っている。それでも、病院経営が悪化して、病院機能が低下していることは明らかだ。経営の悪化している病院や医療従事者に対して、早急に緊急的な助成を行わなければ、今後の新型コロナウイルスへの対応が困難になり、地域での医療崩壊が強く危惧されることになろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)