本来なら今頃、目前に控えたオリンピックを前に、日本中が盛大な盛り上がりを見せているはずだった。特に開催予定地に選ばれた首都東京は、メディアを巻き込み、近年稀に見るお祭り騒ぎになっていただろう。
それが、誰も予想すらしていなかった新型コロナウイルスの影響でオリンピックは延期。緊急事態宣言が発令され、日本のみならず、世界各国が恐怖と不安のどん底へと突き落とされたのだ。毎日、メディアで発表されるコロナウイルスの感染者数。各種イベントの中止。休業や自粛要請による経済悪化。このまま、日本はどこまでダメになるのか――多くの人がそんな疑問を持っただろう。
そうした中にあっても、国民一人ひとりがさまざまな垣根を超えて、諦めることなく粘り強さを発揮したからこそ、現状、最悪の危機は乗り越えたと言えるところまで来たのではないだろうか。
もちろん、感染拡大に関してもまだ予断は許されないし、景気回復へ向けた経済的課題は多い。それでも徐々にではあるが、多くの人が日常を取り戻し始めた。そして気づかされたことは、当たり前の日常こそが、実は最も尊いという現実であったのではないだろうか。
自粛期間中、筆者も表現活動などを通じて、何かできないかと考え続けていた。そうした時に、筆者のTwitterのアカウントに一本のDMが届いた。送り主は、LGYankeesのMC・HIRO。ヒップホップ界で一世代を築いたアーティストからであった。
それが、プロジェクトのスタートとなる。MC・HIROからの依頼は、しばらく活動を休止させていたLGYankeesを再開させるにあたり、筆者に新曲の作詞をしてもらえないかというものであった。その模様は、筆者が携わっているYouTubeチャンネル『S倶楽部』の動画でも配信されている。
どうせ作詞するなら、金儲けではなく歌詞を書くことによって、自粛真っ只中の社会を少しでも明るくできるような試みにしたいというのが、筆者の唯一の思いとなった。そして同じ作詞するなら、LGYankeesの名曲「ウェディングロード」(2011年)に今の時代にあった歌詞をつけて、リメイクすることができないかと考えたのだ。
なぜならば、「ウェディングロード」は結婚式の定番ソングだが、コロナ禍では多くの結婚式が中止や延期になっていたと聞いていたからだ。LGYankeesから依頼が来たときは、1年で最も結婚式が多い6月、ジューンブライドを間もなく迎えるという時期だった。予定されていた結婚式ができず、寂しい思いをしているカップルやその家族、友人などは多いだろう。そんな人たちを元気づける曲を書いてみたいと思ったのだ。
やるとなったら、急がないといけない。権利面などさまざまな問題を全てクリアしていき、「ウェディングロード」をリメイクする許可もおり、正式に作詞することとなったのだった。
出来上がった曲を販売しようというつもりは毛頭ない。結婚式の中止や延期を余儀なくされたカップルに、お祝いのメッセージをつけて贈らせてもらう。このプロジェクトに携わった全ての人々が、手弁当のボランディアである。レコーディング、MV撮影に至るまで、大勢の人たちがこの企画に参加してくれている。
そして、スタートから約1か月半で「ウェディングロード2020」が完成。どうせなら、カップルだけでなく、例えば大変な時期に出産を控えた家族へのエールや、新しい家族の誕生のお祝いとしても使ってもらえるようにしてはどうかと提案があり、末長く愛される曲にするためにも、あらゆるライフイベントを対象に希望者を募ることとなった。また、それに伴い筆者もLGYankeesに加入し、本気でこのプロジェクトを拡大させいくことにしたのだ。
同じ「書く」という作業でも、筆者が当サイトなどで書く原稿と、いわゆるリリックといわれる作詞は全く違う。筆者にとっても初めての試みだっただけに、当初、戸惑いもあった。だが筆者には筆者で、この曲に深い思い出があった。それをありのまま歌詞にすることにした。最終的に、どんな歌詞になったか、原曲とはどう違うのか、ぜひ聞いてもらいたい。
現在、筆者のTwitterアカウント「沖田臥竜」で楽曲配信の申し込み受付をしており、すでに多数のDMが届けられている。希望者には、MC・HIROによるメッセージ映像をつけて、順次に贈らせていただいている。このプロジェクトを開始させるにあたり、MC・HIRO自身も新生LGYankeesとしての新しくTwitterのアカウントを開設させた。こちらのDMでも受付をしている。「LGYankees_official」。
「ウェディングロード2020」を通して、ひとりでも多くの人に対してお祝いと応援をして、感動を与えられたら、それに勝る喜びはない。
(文=沖田臥竜/作家)
【申し込みアカウント】 「沖田臥竜」 「LGYankees_official」/YouTubeチャンネル『S倶楽部』