5日に投開票された東京都知事選。同日午後8時過ぎ、Twitter上では「#不正選挙」がトレンド入りしていた。投票終了からわずか4秒で、NHKが現職小池百合子氏の当選確実を報じたことを受けて、一部候補者の支持者らが一斉に投稿したものだった。「開票作業もしていないのにマスコミは癒着している」「選管もマスコミもグルだ」というのが主な主張だったのだが、開票作業に従事した都職員やマスコミ関係者らは「さすがにそれはない」と呆れている。
NHKは5日、都内32カ所の投票所で投票を終えた有権者2845人を対象に出口調査を行い、62%にあたる1763人から回答を得た。その上で、6割越えの得票率を示していた小池氏に対して当選確実を報じた。
開票所で取材をしていた大手新聞社記者はこう嘆息する。
「さすがにここまで情勢が明らかな選挙で、出口調査の結果が実際の投票結果と異なることはありません。確かに過去の国政選挙では、接戦の選挙区で、民放が出口調査を読み間違えて実際と異なる候補者を当選確実と報じてしまう例はありました。しかし、今回の選挙は接戦ですらありませんでした」
別の民放記者もこう語る。
「開票所では各陣営から送り出された関係者が開票作業を見守っています。我々も双眼鏡や望遠レンズで開票台にある票の束に記載されている候補者名をチェックし、リアルタイムで票読みをしています。東京都知事選のように投票用紙が膨大な数に上る場合、開票職員が数え間違えたりすることもありますが、意図的に不正を行うのはかなり難しいと思いますよ」
開票作業を終えた都職員は「ほぼ夜通しの仕事なので、みんな真剣に一刻もはやく作業を終わらせたいと思って仕事をしています。背後で見ている各陣営関係者やマスコミに疑念を抱かせるような動きをしていれば、終わるはずの仕事がいつまでも長引きますし、誰も得をしません」と話す。
本当にあった驚愕の「不正選挙」
それでは、選挙管理委員会などが不正に手を染めることは絶対にないのだろうか。過去には青森県で驚愕の不正選挙が行われていたのだ。有権者や役場職員の買収工作などが頻発した、いわゆる「津軽選挙」だ。現在でも青森県内の開票場では、他県ではあまり見かけない物々しい雰囲気で作業が行われている。
まず開票所の各出入口に警察官が立哨して、開票作業中の不審な人の出入りを監視している。そして最も異様なのは、開票所内に投光器が設置されていることだろう。青森県警によると、「もし開票中に会場の照明が突然落ちた場合、すぐに立哨中の警察官が開票台を照らすために設置されている」のだという。
地元紙記者は以下のように解説する。
「突然、開票所の照明が落ちて、気がついたら作業中の役場職員が投票用紙を食べていた。そのため、現在に至るまで県内の選挙ではこういう警戒措置が取られるようになったと聞いています。つまり、支持していた候補者が負けそうだったので、相手候補の票を食べてなかったことにしようとしたということです。そのほか、有権者に配ったおにぎりの包みに札束が入っていたとか、伝説のような話がたくさんあります。いずれにせよ何十年も前の話で、正直、おとぎ話みたいな感じです。
ただ、金権選挙はまだ一部地域で続いていて、2013年実施の平川市長選では市議20人中15人が公職選挙法違反で逮捕されました。まだまだ政治の世界はドロドロしていますよ」
立候補者はもちろん、有権者も、マスコミも襟を正して真摯に選挙に向き合う必要があるようだ。
(文=編集部)