災害は忘れたころにやってくる――。東日本大震災から8月11日で9年5カ月。先月30日に、首都圏では緊急地震速報が流れ、「ついに首都直下地震か」と関係各所ににわかに緊張が走ったことは記憶に新しい。誰もが災害への備えの必要性を感じている。だが、防災袋を用意したり、避難所の位置を家族で確認したりする以外に一般家庭にできることなどあるのだろうか? そんな疑問に対して警視庁警備部が今月12日、Twitterに投稿した次のような「家族できる防災訓練」が評判を呼んでいる。
実際に困ること、必要な物を明らかに
「災害の発生を想定し、家族6人(本人、妻、10歳、8歳、6歳、2歳)で、電気・ガス・水道を使わずに24時間生活してみました。終了後に家族で話し合い、様々な問題点を明確にすることができたのはよかったと思います。気付いた点をまとめましたので、添付資料を参考として下さい」
災害の発生を想定し、家族6人(本人、妻、10歳、8歳、6歳、2歳)で、電気・ガス・水道を使わずに24時間生活してみました。終了後に家族で話し合い、様々な問題点を明確にすることができたのはよかったと思います。気付いた点をまとめましたので、添付資料を参考として下さい。 pic.twitter.com/DkscGRK70U
— 警視庁警備部災害対策課 (@MPD_bousai) August 11, 2020
災害発生を想定して「午前8時~翌日午前8時まで自宅マンションで電気、ガス、水道を一切使わないで生活してみた」というYoutuberのような企画だ。だが、さすがは震災をはじめ日本全国の大規模災害に派遣されてきた警視庁。電気、ガス、水道の3項目で「災害時に実際、何が困るのか」「何が手もとにあると良いのか」を非常にわかりやすくまとめている。
電気の項目では「ライト·灯器類は、部屋に一つずつ置いておき、 さらに一人一つあると安心」「長女『夜は真っ暗になるので、 ライトを探すのも難しい』」「ランタン型のLEDライトが、 部屋全体を照らせて使いやすい」「電灯のスイッチ近くにタッチライト (100円ショップ等でも販売)を、両面テープで貼り付けておくと、日常に近い感覚で使える」などとすぐに実践可能な対策が提案されている。
続いて水道の項目。トイレは「風呂の残り湯を使用したが、 1日で大半を使ってしまった」「妻『流すのは大の時だけでいいんじゃない?』→ 非常用簡易トイレも準備しておく必要あり。毎回流せず、換気扇も回せないので、匂いがこもりやすい→ 芳香剤や消臭スプレーの必要性あり」と指摘する。
ガスなしでの炊飯、調理では「カセットコンロは必須」とした上で、「料理だけでなく、調理器具や食器を洗う水が大量に必要→食品用ラップ、 アルミホイル等を皿に巻いて使用→ 紙皿、紙コップ、 割りばし等を準備しておく→調理器具にアルミナイルやクッキングンートを敷いて料理→鍋やフライパンの汚れはキッチンペーバーや古布で拭き取る」などと提案している。
そのうえで以下のように家族の感想をまとめ、今後の「防災対策の振り返り」を実施している。一部抜粋する。
妻(4?歳)(編注:原文ママ)
「紙コップや紙皿は大量に準備しておかないと、 あっという間に無くなる。食品用ラップを紙皿に巻いたが、 食べ物がくっついてしまい使いにくかった。」「災害時は、 ゴミも大量に出ると思うので、 ゴミ袋のストックも確認しておきたい。」
長女 (10歳)
「誰かがライトを持っていってしまって、夜トイレに行くときに探した。」(まもなく犯人は長男と判明)「夜になると、できることが少なくなるので、 明るいうちにやっておく。」
「もう一回やってみたい」
次女(8歳)
「キャンプみたいで楽しかった」「非常食のお米(アルファ化米)はもう食べたくない」
「動画の方が良いのでは」
一連のまとめを読んだ日本赤十字社の関係者は次のように評価する。
「新型コロナウイルス感染症の拡大で、なかなか地域の防災訓練をやりにくい状況です。タイムリーな防災シミュレーションだと思います。ただ紙の報告書ではなく、動画のほうがわかりやすく、かつ面白いと思うので、もっと多くの人に伝わるのではないでしょうか」
確かに。紙の報告書というのがいかにも警察らしい。ただステイホームしながら、家族全員で手軽に非日常を体験できる取り組みであることは確かだ。この夏、キャンプの代わりにやってみるといいかもしれない。