アメリカのドナルド・トランプ次期政権の陣容が徐々に固まりつつある。
かねてより副大統領候補にはインディアナ州知事のマイク・ペンス氏を指名しているが、国務長官にエクソンモービル最高経営責任者(CEO)のレックス・ティラーソン氏、財務長官に元ゴールドマン・サックス幹部のスティーブン・ムニューチン氏、商務長官には投資家のウィルバー・ロス氏の起用が発表されている。
外交・安全保障面では、国防長官に元中央軍司令官のジェームズ・マティス氏、大統領補佐官に元陸軍中将のマイケル・フリン氏、中央情報局(CIA)長官には元陸軍士官で下院議員のマイク・ポンペオ氏が指名されるなど、元軍人の起用が目立つ。
特に「狂犬」の異名を持つマティス氏は過激で好戦的な発言も多く、今後のアメリカの国防政策が注目される。この人事の意図は、どこにあるのか。国際エコノミストの長谷川慶太郎氏は、以下のように語る。
「マティスは1990年代の湾岸戦争や2003年からのイラク戦争で陣頭指揮にあたった優秀な軍人であり戦略家だ。これまで国防長官の要職には、元軍人では陸海空の軍の長官か参謀総長しか就任していない。今回、マティスを抜擢したのは『思いきってやりなさい』というトランプの意思表示だろう。
マティスが国防長官に就任したら、まず何をやるか。太平洋軍の司令官を呼びつけて第7艦隊から原子力空母を中心とした機動部隊を2つ編成し、南シナ海を縦横無尽に走らせるだろう。これは、中国に対する牽制どころか挑発行為である。『航行の自由』作戦の強化版であり、『我々はこういう体制だぞ』という姿勢を見せつけるに違いない。トランプ政権はオバマ政権と違って中途半端なことはしない。対中政策は、一歩も譲らない強硬なものになるだろう」(長谷川氏)
トランプ政権誕生で苦境に立たされる中国
トランプ氏と中国といえば、台湾をめぐって対立構造が生まれている。トランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話協議を行ったことに対して中国が反発、トランプ氏はそれをはねのけるかたちで「ひとつの中国」に縛られない姿勢を貫いている。
また、トランプは『北朝鮮の問題は中国が解決すべきだ』という姿勢を鮮明にしている。今後も追撃の手を緩めないことが予想されるため、トランプ政権誕生によって中国は苦境に立たされるだろう。一方で、中国大使にはアイオワ州知事で習と親交のあるテリー・ブランスタドを起用する。これはアメとムチの使い分けであり、非常にビジネスマン的な発想だ」(同)
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