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菅首相のブレーン・竹中平蔵氏、「生活保護&年金廃止」「一律7万円支給」提言が物議

文=編集部
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竹中平蔵氏(ロイター/アフロ)

 菅義偉首相のブレーンの一人、パソナグループ会長の竹中平蔵氏の「ベーシックインカム」(基礎所得保障、BI)構想に批判が殺到している。竹中氏は23日、BS-TBSの報道番組『報道1930』で、所得制限付きのベーシックインカムを提案した。「国民全員に毎月7万円支給」「所得が一定以上の人は後で返す」「マイナンバーと銀行口座をひも付け所得を把握」などというもので、インタビュー記事などでかねてから提唱していた案を改めて語った。

 問題はその内容だった。「7万円」という額面や「所得制限」の実施、財源を生活保護や厚生年金を廃止にすることで、捻出するという「自己責任論」の第一人者らしい竹中氏の構想だったため、インターネット上では批判が殺到している。

竹中氏「究極のセーフティーネットが不可欠」?

 竹中氏は今年7月13日、ウェブサイト「エコノミスト Online」(毎日新聞出版)に掲載されたインタビュー記事『ベーシックインカム導入は「ショックドクトリン」でやるべき=竹中平蔵』で、以下のように語っていた。

「これまでは偏差値の高い大学を出て、大企業に入って管理職になれば安泰だったが、今はそういう人生の海図が描けなくなっている。チャレンジし続けなくてはならないが、チャレンジにはリスクがつきもので、『究極のセーフティーネット』が不可欠だ」

「(財源の)基になるのは(米経済学者)ミルトン・フリードマンの『負の所得税』の考え方だ。一定の所得がある人は税金を払い、それ以下の場合は現金を支給する。また、BIを導入することで、生活保護が不要となり、年金も要らなくなる。それらを財源にすることで、大きな財政負担なしに制度を作れる。生活保護をなくすのは強者の論理だと反論する人がいるが、それは違う。BIは事前に全員が最低限の生活ができるよう保証するので、現在のような生活保護制度はいらなくなる、ということだ」(原文ママ、以下同)

 つまり、自身がこれまで推し進めてきた労働市場の規制緩和の一層の促進を合わせ、財源を新たに捻出せず、既存のセーフティーを簡略化し、しかも政府支出も抑えるということだ。これに対してTwitter上では有識者などから以下のような批判の声が上がっている。

「何かと思えば、月に7万円を国民全員に渡し、今受けている生活保護を無くし、年金も無くすというもの。要は、厚生年金を無くし全員を国民年金にする、そして生活保護も極端に引き下げ、あとは自助で頑張れとするもの。さすが菅のブレーン」

竹中平蔵氏が昨日の『報道1930』に出演し、月7万円という到底生活が儘ならない金額を『ベーシックインカム』として提示し、生活保護も年金も不要などと暴論を展開したようだが、こんな人間と首相就任後に誰よりも早く懇談したのが『自助』大好きな菅義偉氏。今何とかしないと待ち受けるのは地獄のみ」

似ているようで違うフィンランドの実験と竹中氏の構想

 BIといえば、フィンランドの国名をよく耳にする。フィンランド政府は2017年から18年、BIの社会実験を実施。今年5月6日に最終報告書を公表している。

 報告書によると、実験は16年11月時点の「失業手当受給者」のうち、無作為に抽出した25歳から58歳までの2000名を対象に、17年1月から18年12月までの2年間にわたって毎月560ユーロ(約6万5520円)を支給するという内容だ。竹中氏の月7万円とほぼ同水準だ。

 ただしフィンランドの実験では、この期間中に新たに職に就いたり、事業を起こしたりして収入が発生しても、支給額は減らされることはなかった。そのため、給与の高低にかかわらず仕事に就くことができるので、失業率が低くなると予想されていた。

 実験では通常の失業手当受給者と比較して、BIが受給者の雇用や収入、社会保障、心身の健康、幸福度、生活への満足度などに、どのような影響をもたらしたかを分析した。その結果、生活への満足度が高かい一方、精神的なストレスを抱えている割合が少ないことがわかった。

 雇用にもたらす影響では、2017年11月から18年10月までの平均就業日数はベーシックインカムの受給者が78日、失業手当受給者では73日となり、BI受給者の方が若干高い数値を示した。

 以上のようにフィンランドはあくまで失業手当受給者に限定した代替案として月6万5000円のBIが支給される実験を行ったのであって、竹中氏の構想のように厚生年金や生活保護など生活保障全般をひっくるめて月7万円支給に統一するというわけではない。

 同実験中にフィンランドに駐在していた日本経済団体連合会関係者は次のように話す。

「フィンランドではBIの本格導入をめぐり、国民的運動がなされています。雇用に関する影響に顕著な効果はありませんでしたが、国民のストレス低減は長期的な目で見れば、生産性の向上につながります。また実験では、生活に余裕ができることで地域や社会への参加度の向上が見られていることも注目されていました。

 BIは国家としての総合力を上げるため、国民の福祉向上や社会保障のために行うためのもので、財源の縮小や自己責任論を補強する制度ではないと思います。そもそもの導入理念が違うのではないでしょうか」

 竹中氏が述べる「究極のセーフティーネット」とは、いったいなんなのか。「究極」という言葉には「最後に達するところ」「とどのつまり」という意味がある。「これ以上、国は国民を助けない」という意味でないとよいのだが。

(文=編集部)

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