韓国の国会で弾劾訴追され職務停止中だった朴槿恵(パク・クネ)前大統領が3月10日、韓国憲法裁判所の判決により罷免された。さらに、検察は朴氏の逮捕状を請求しており、30日に朴氏は逮捕状の発布を判断するための裁判所の審査に出席する。ここでは、事情聴取の時と同様、容疑を全面的に否認するとみられている。
1987年の民主化によって現在の弾劾規定が導入されて以降、大統領が罷免されたのは初めてのことだ。現在、韓国は未曾有の混乱に陥っている。
昨年11月、「崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件」が発覚したことが引き金となり、朴氏の退陣につながった。不祥事が続々と発覚するなか、韓国最大企業・サムスン電子の事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が逮捕状されるなど、その影響は韓国経済を支える財閥系企業にまで及んでいる。
一連の騒動のなかでも、政権と財閥企業の関係に亀裂が入るきっかけとなったのは、ロッテグループとのやり取りだと指摘する識者の声がある。
ロッテグループは2015年に、創業者・辛格浩(シン・キョクホ)の長男・辛東主(シン・ドンジュ)と次男・辛東彬(シン・ドンビン)による「お家騒動」が大きな注目を浴び、財団に70億ウォンにも及ぶ金額を送金するまでに至った。なぜ、一連の騒動でロッテがやり玉に上がったのか。
韓国の政治事情に精通する大学教授は、一連の騒動についてこう話す。
「朴槿恵政権発足当時、ロッテの辛東彬会長は朴氏のすべての海外遊説に企業人として同行するぐらい熱心に応援していて、朴政権の経済政策などにも積極的に資金を提供していたほどです。それぐらいロッテは朴政権を支持していたのに、見放されてしまいました。ロッテの側からすると、もどかしさもあるでしょう。裏を返せば、それほど政権が危ない状態だったといえます」