ロッテ問題は“目くらまし”だった?
では、なぜ朴氏は恩義を無視してまでロッテを“切る”という判断を行ったのか。
「当時の政権側からすると、次の選挙までに支持率を上げなくてはならず、そのために国民から不人気の財閥を叩くことで人気を取ろうとしたと考えられます。そこでロッテが利用されたのです。もともと、韓国は財閥と政権の癒着が非常に強く、財閥は政権の力なくしては成長できないというジレンマがあります。ロッテは、李明博(イ・ミョンバク)政権との癒着も強く、お家騒動は朴大統領側と検察側から狙い撃ちされたという経緯があります」(同)
だが、朴氏の意図は、ロッテの解体ではなく“見せしめ”程度だったと同教授は推測する。
「ロッテは、かねて政権との距離が近かったのですが、特に李、朴2政権と癒着して経営戦略を伸ばしてきました。それが仇になったかたちです」
一方で、皮肉なことに、財閥系の企業への“攻撃”は、朴氏自身の首を締めることにもなった。
サムスングループで働く社員はこう明かす。
「ロッテの裏金問題が明るみに出た際、社内で『次はウチかもしれない』という危機感が広がりました。ロッテ問題と同時期に、元検事や弁護士など検察関係の権力者たちが関わった大きな不祥事“ネイチャー・リパブリック問題”が起きていました。そのタイミングで浮上したロッテ問題は、国民の目をそらそうという検察の意図があったといわれています。
その後、実際に李副会長が逮捕され、サムスンにも矛先が向きました。あくまで私個人の見解ですが、ロッテ問題からの財閥叩きの流れは、検察の恣意的な判断が働いていたように思います。
また、朴氏は支持基盤だった財閥を、国民の人気取りのために叩こうとしていました。そういった意味では、朴氏の辞任でホッとしている関係者は多いと思います」
前出の教授は、韓国政権は根本部分を変えないと、同じ過ちを何度も繰り返すおそれがあると危惧する。
「根本的な問題は、政権と企業の癒着にあります。現代自動車グループも過去にロッテと同じような目に遭っています。政権と癒着しなければ銀行からの借り入れもできないのが現状で、財閥の出資も政権が認めたりしています。つまり、韓国の財閥は政権との癒着がなければ存在できないシステムといえます」
5月9日に次期大統領選挙が実施されることが決定している韓国。だが、誰が舵をとっても、その根源を変えることは困難で、国民の不満が解決される日が到来する兆しはみえない。
(文=編集部)