死傷者数は100万人
さらに、米軍が韓国軍と共同で1974年から策定し、その後の北朝鮮の変化などに合わせて随時、変更を加えてきた米韓軍の軍事作戦「作戦計画5027」によると、第2次朝鮮戦争が勃発すれば、米軍5万2000人、韓国軍49万人、民間人を加えれば死傷者数は100万人にも上ると米国防総省は試算しているという。
また、戦争勃発でわずか1週間で朝鮮半島から韓国人25万人、北朝鮮人5万人の計30万人の難民が日本に押し寄せ、最終的には戦闘終結までに最悪の場合、260万人超の難民が日本に上陸するというのだ。1989年に九州沿岸に漂着したベトナムからのボートピープルは1000人近い。これに中国からの偽装難民を加えると、1年間に3500人もの難民が九州に上陸した。これだけでも、日本政府は彼らの取り扱いに右往左往した。
第2次朝鮮戦争が発生した場合、その比ではない。日本政府に最大で260万人もの難民の世話をみることができるのか。さらに、このなかに北朝鮮の工作員が紛れ込んでいる可能性も否定できない。それこそ、北朝鮮の特殊部隊のグループが紛れていれば、難民収容所を抜け出して都市部に侵入し、他の特殊部隊の一団と合流して原子力発電所などをテロ攻撃されれば、東日本大震災による東京電力福島原発事故の比ではないだろう。実際に、北朝鮮の特殊部隊が日本を攻撃しないとの保障はまったくない。
ミサイル攻撃
北朝鮮の日本への攻撃といえば、現実的なのがスカッドやノドンなどの中距離ミサイル攻撃だ。すでに、北朝鮮が頻繁に実施しているミサイル発射実験でも、ミサイルが日本近海に着弾しており、現実的な脅威となっている。
防衛省は2005年から順次、地上配備型の地対空誘導弾「PAC3」部隊を配備。16年までに全国6つの高射群すべてへのPAC-3の配備が完了しているが、実験ではともかく、実際に使われたことがないだけに、たとえば核兵器を搭載したミサイルを迎撃できない場合など、最悪の事態が想定される。
実際、PAC-2の場合、イラク戦争での迎撃率はわずか9%にすぎないことがわかっている。しかも、ミサイル迎撃できずに目標を外したPAC-2が空中で爆破し、その破片が市街地に落下して民家の屋根を突き破り、人的、物的被害を拡大するというケースも出ており、北朝鮮によるミサイル攻撃が実施されれば、日本の被害は不可避だろう。
このように考えれば、北朝鮮有事が今発生すれば、日本も大きな被害を被ることは間違いない。1950年に勃発した第1次朝鮮戦争のときには、北朝鮮の軍事力自体が高くなかったため、日本に戦火が及ぶことはほとんどなく、難民の大半も朝鮮半島内にとどまったが、いまや輸送手段は多種多様なだけに、確実に日本に押し寄せることは、これまで見た通りだ。
北朝鮮の核開発、それに伴う米軍の対北攻撃、戦火拡大による第2次朝鮮戦争の勃発となれば、日本にとっても最悪のシナリオであり、なんとかして、朝鮮半島有事を防がなければならないと願うのは筆者だけではあるまい。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)