「詐欺同然」残紙訴訟の本格化で新聞業界崩壊も
――翻って日本では、新聞の販売部数減少が伝えられています。
渡邉 今、新聞業界には激震が走っています。かつて消費者金融業者のグレーゾーン金利に関する過払い金返還訴訟に尽力した弁護士や地方議会議員の方々が中心となり、「NO!残紙キャンペーン」が展開されているのです【※1】。
「残紙」とは、売れる見込みがないのに新聞社が新聞販売店に強制的に押しつけている「押し紙」と、販売店が折り込みチラシの広告代を稼ぐために、自発的に新聞社から余分に仕入れている「積み紙」の総称のことです。
本書で詳述していますが、残紙は部数の水増しであり、それによって新聞社は広告料金を不当に高く徴収していることになります。そのため、広告主に対する詐欺同然の行為とみなされています。これまでも問題視されてはいたものの、是正の動きは進まず、「新聞業界最大のタブー」「マスメディアの闇」などといわれてきました。
かつて、グレーゾーン金利が最高裁判所で認められず、過払い金返還訴訟が相次いだことで、倒産する消費者金融業者が大量に発生しました。今後、残紙関連の訴訟が進むものと思われますが、仮に裁判所が残紙の不当性を認めれば、グレーゾーン金利のときのように判例として機能し、同様の過払い金返還訴訟が相次ぐでしょう。
それは、すべての新聞社、新聞販売店、広告代理店にとって大きなダメージとなります。部数や広告費の減少が止まらない新聞業界では、すでに倒産する販売店も出始めていますが、残紙問題のゆくえによっては新聞社の経営危機や倒産も現実味を帯びてきます。
――本書では、広告代理店を含む日本のメディア業界の構造的な問題にも踏み込んでいます。
渡邉 日本のメディアは巨大資本による寡占化が著しいことが問題であり、換言すれば、一種の談合構造になっているといっても過言ではありません。まず、新聞社、テレビ局、ラジオ局が同一資本によるメディアグループをつくり上げています。これを「縦糸」と呼びましょう。
縦糸のメディア各社は記者クラブに属しており、同じ管理下で同じ情報を得て連携して動いています。そのため、同じ情報が同時に大量生産される構造になっているわけです。
そして、メディア各社はコンテンツ制作については芸能事務所と癒着し、広告収入については電通、博報堂など寡占市場の広告代理店に依存しています。メディアに対して大きな力を持つ芸能事務所と広告代理店を「横糸」と呼びましょう。
この縦糸と横糸が編み込まれるかたちで、相互に依存すると同時に巨大な既得権益をつくり上げてしまっているのです。しかし、この芸能事務所や広告代理店についても、今はさまざまな問題が表面化しており、かつてのような力は失われ、それがメディア崩壊の一端を担っているともいえます。
『メディアの敗北 アメリカも日本も“フェイクニュース”だらけ』 ローマ法王の警告「偽りの情報拡散は罪である」―― 朝日・NHK・CNN・NYT(ニューヨーク・タイムズ)よ、よく聞け! もう、世間は新聞・テレビの「作られた世論」に騙されない!