衆議院議員の任期も残すところ、あと1年4カ月程度。8月初頭に行われた内閣改造の前後から、にわかに解散・総選挙の話が上がるようになってきた。その背景としては、残りの任期もさることながら、安倍政権及び自民党の支持率の急降下・低迷、民進党の迷走・弱体化や支持の低迷、そして東京都議会議員選挙での都民ファーストの会の躍進があるとされている。
特に、都民ファーストの躍進が、与党が早期に解散・総選挙に踏み切る大きな理由であるかのように語られることが多いと感じる。その裏には、都民ファーストは躍進したが、あくまで都議選での話であり、まだ国政進出の準備は万全とはいえず、それが整う前に解散・総選挙に打って出れば、“都民ファースト旋風”の影響を最小化できるという狙いがあるようだ。
都議選で自民党は大敗したのだから、都民ファーストの躍進は自民党にとって脅威のひとつであることは間違いない。しかし、自民党にとってそれ以上に脅威、というより目前の大きな課題は、自民党内での“ポスト安倍”をめぐる「静かな」内紛であるように思う。
森友問題に続いて加計学園をめぐる国家戦略特区制度の恣意的運用疑惑への対応で二転三転した安倍内閣、南スーダンPKO日報問題での稲田朋美元防衛相の対応、さらに都議選の街頭演説で安倍首相の「こんな人たちには負けるわけにはいかないんです」発言も加わって支持率は一気に低下、世論調査によっては30%を切るものまで出てきた。
それらがなぜ起こったのかといえば、これまで抑えられてきた自民党内での安倍内閣、首相官邸に対する不満が一気に噴出、制御不能の状況になっているからだ。ある関係者の言葉を借りれば、「ぐちゃぐちゃ」な状態のようである。
別の言い方をすれば、自民党は現在極めて不安定な状態にあるということだ。与党という観点で見ても、これまで首相官邸の言いなりになることを強いられてきたに等しい公明党は、都議選で都民ファーストと共闘して完勝、大敗した自民党に対しての発言力、「バーゲニングパワー」を回復するに至った。
党内にこれまで以上に気を遣い、連立パートナーであり「友党」と呼ぶ公明党にも気を遣わなければいけなくなった自民党に、今この段階で解散・総選挙を考える余裕などあろうはずがない。
改造後の内閣も、筆者から見れば「安全運転」内閣。多くの閣僚経験者の登用は、「仕事人」だからではなく、失点をさせないためという意味合いが大きいだろう。実際、入閣待機組の「身体検査」は相当念入りに行われ、弾かれた議員も少なくなかったという。それが功を奏したとでも言おうか、内閣支持率は実質的に横ばいで、下落することは免れられた。(最近の調査で微増したものも見られたが。)