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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

横浜市長選、三原じゅん子氏が出馬か…菅首相、地元・横浜に経済損失のカジノ誘致ゴリ押し

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
横浜市長選、三原じゅん子氏が出馬か…菅首相、地元・横浜に経済損失のカジノ誘致ゴリ押しの画像1
自民党の公式サイトより

「顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを」――。

 この名台詞の主、元女優の三原じゅん子参議が7月の横浜市長選に出馬するという観測が浮上している。林文子現市長が、市民からの反対が根強いカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の道筋を付けた後、4期目に出馬せずに引退するという。新型コロナウイルス対応の遅れや与党議員による自粛期間中の「夜の会食」問題が政権に大打撃となった菅義偉首相は、「菅チルドレン」で中高年層を中心に知名度の高い三原氏を候補に立てることで、地元横浜での権勢を保つ狙いがある。

自民、三原氏出馬でイメージ回復狙う

 三原氏は、約40年前の1979年、不良の「ツッパリ」の中学生役として往年の人気ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)に出演したことでブレイクした。三原氏の公式ホームページなどによると、不遇な子供時代を過ごした後、女優としてデビュー。2008年に子宮頸がんを患った経験から医療制度改革の必要性を実感し、政治家を志した。野党時代の2010年の参議院選挙で自民党の公認候補として全国比例区で出馬し、当選。2期目の16年の参院選では神奈川県選挙区から比例で出馬し当選し現在に至る。厚生労働副大臣、自民党女性局長などを歴任し、リベンジポルノ法などの成立に尽力。最近では、インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策PTの座長を務めている。

 今回の出馬観測は、三原氏が次回の22年参院選での改選のため、時期的にちょうどいいことや、神奈川県選挙区で横浜市長選に地理的に近いことが主な理由だ。三原氏が所属する自民党にしても、19年の参院選での河井克行・案里夫婦による大型買収事件や、鶏卵業界をめぐる吉川貴盛元農相の贈収賄事件、離党にまで追い込まれた松本純衆議らによる夜の会食問題など、連続する不祥事によるイメージダウンを食い止めたい思惑がある。「永田町ではそれほど目立ってなくても、悪い事をしない、知名度がある、オッサンに逆風の中での女性候補、これだけで出馬には十分だ」(横浜政界関係者)との声が出るのも無理はない。

林市長が8月までに事業者を決め、天下り

 林氏は本サイトの記事でも批判したように、IR誘致をゴリ押しした。1月の横浜市会で住民投票を求める条例案が否決されたため、7月の市長選で反対派の市長が当選し、国に対して誘致を取り下げない限り、IR誘致は強行される見通しだ。

 横浜市は1月21日、IR誘致に向け事業者の公募を開始し、2~5月に資格審査、6月提案審査書類の受付、夏頃に事業者を選定、秋頃に基本協定を締結するといった想定スケジュールを発表した。公募する事業者には、国内事業者のセガサミーホールディングスのほか、ギャラクシー・エンターテインメント・ジャパン(マカオ)、メルコリゾーツ&エンターテインメント・リミテッド(米国)、ゲンティン・シンガポール・リミテッド(シンガポール)などの名前が挙がっている。

 この「夏ごろの事業者の選定」が重要な意味を持つという。先の横浜政界関係者の解説。

「結局のところ、国だの県だのは⼿続き的に話を通すだけで、横浜市の中で話がまとまってしまえば、もう決まったも同然だ。この夏ごろというぼかし方がクセモノ。林氏は8月が任期のため、事業者を決めるワルモノを演じた後は財団などに天下るというシナリオが、菅氏が掌握する自民党神奈川県連の中で出来ている」

もはや誰も必要としない横浜カジノ

 林⽒は今年始めに配信された地元紙のインタビューで、IR誘致を「税収確保の上で有力な手段」と改めて強調している。ただ、カジノは国際的にコロナ禍で壊滅的な打撃を被っており、今後も3密事業として入場制限などの規制が強まるのは目に見えている。世界中のセレブをあてこんだとしても、コロナ禍以前から「ラスベガスやマカオならいざ知らず、わざわざ博打を打ちに来るような知名度や魅力は横浜にはない」(自民党ベテラン議員)との見方が大勢だった。

 そもそも、このIR誘致にしても、「安倍晋三前⾸相がトランプ前⽶⼤統領から⽀援者のカジノ事業者であるラスベガス・サンズを参⼊させてほしいと頼まれたのがきっかけ」(先の関係者)であり、今回のカジノ事業にしても外資系の事業者が選定された場合、収益の半分以上が外国に流れる仕組みで、地元経済の活性化に何の意味もないどころかむしろマイナスなのは明らかだ。

 しかも、ラスベガス・サンズは撤退を表明しており、安倍氏も首相を辞任した以上、本来の「不純な動機」すらなくなっており、IR誘致を取り下げてもおかしくなさそうなものだ。神奈川県選出の国会議員はこう解説する。

「菅氏は自分も肝いりで旗を振ってきた以上、メンツの問題が大きい。ここで横浜が撤退ということになれば『首相になっても地元に大型案件一つ持って来れないのか』と支援者の地元業者から白い目で見られ、権威は失墜する。菅氏は地元の土建業者など利害関係者にこれまで事業の配分などを取り決めているとみられ、今さら後には引けないんでしょう。『ゴリ押しの菅』の面目躍如というわけです」

 今やコロナ禍で損失しか生み出さないことが確実となったハコモノを税金でつくる方針を強行するのは、どう考えても横浜市のためにならない。林氏も7月の市長選に出馬しないにしても、しっかり撤退を表明してから身を引くべきだ。三原氏が出馬しイメージを刷新し、仮に横浜市政を引き続き牛耳れたとしても、政府・与党の蛮行のツケは後の世代が負担することを忘れてはいけない。菅氏周辺の利害関係者しか潤わない事業からは、さっさと撤退すべきだろう。

 三原氏は、夜の会食問題で衆院議員を辞職した公明党の遠山清彦氏の神奈川6区から自民党の公認候補として出馬するとの観測も出始めており、注目を集めている。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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