東京都議会が始まった。都議会公明党が、小池百合子知事との距離をどう取っていくべきかで揺れている。東村邦浩幹事長は11月14日、「知事を支えてきたが、一線を画して是々非々で対応する」と語った。
この発言に慌てたのだろうか、公明党の北側一雄中央幹事会会長は11月16日、「都議選前に都民ファーストの会との間で政策協定を結び、今もそれが維持されている。それを、しっかり実行するよう、小池知事に求めていく方針。なんら変わりはない」と軌道修正した。公明党関係者は語る。
「東村さんの『小池知事と一線』発言だが、公明党や創価学会は一切決定していない。東村さんの感情論。悪い人ではないが、自分の感情で発言してしまうきらいがある。小池さんが希望の党代表を辞任したタイミングなのだから、『私たちはこれまでと変わらず、小池知事と対応する』とでも言っておけば良かった」
また、別の公明党関係者は言う。
「『是々非々』というのは以前から言っているし、どんなに不人気になろうが、小池さんが都知事であることに変わりはない」
東村幹事長は小池氏が都知事になって絶大な人気だった時に、「自公連立で一貫してやってきたが、信義は完全に崩れた」と、昨年12月15日の都議会定例会最終日の閉幕後、記者のぶら下がり会見で爆弾発言をした。このときも公明党の関係者は「言い過ぎ」「また勝手なことをして」といった冷ややかな感じだった。
とはいえ、東村幹事長が組織の意向を無視してやっているということではない。もともと都議会公明党の幹事長は2年が任期だが、前任の長橋桂一都議は1年しかやっていない。表向きは「都知事選の敗北の責任」ということだったが、長橋氏が豊島区の選出で小池氏の本拠地のため「(次の)都議選が危ないということで幹事長を降りた」(関係者)と取沙汰された。一方、東村幹事長は創価大学のある八王子の選出。「学会の意向にかなり気を遣っている」(公明党関係者)との評もある。
「東村幹事長の『小池と一線』発言は計算ずく。これから都政は来年度の予算編成が本格化する。(公明党が)キャスティングボードを握って、小池知事に対してブラフ(脅し)をかける意味もある。だから、高い球を投げた。決別はポーズでしょう」(都政を取材する全国紙記者)。
幹事長とセットで動く谷村孝彦・幹事長代行が小池知事の特別秘書、野田数氏と親しいとされるが、小池知事と公明党の関係は盤石なのか。
「都議会公明党は都議会自民党との関係修復にも動きだしている。それが進めば、東村幹事長ではなく、都議会公明党の議員団団長であり、公明党本部の代表代行でもある中嶋義雄氏が動くことになるだろう。自民党側のカウンターパートは自民党都連幹事長の高島直樹都議、もしくは都連前幹事長の内田茂・元都議だという声もある」(同)
今都議会では、公明党と都民ファーストの会との連携がどうなるかで、「私立高校の実質無償化」の行方にも影響を与えそうだ。小池知事は公明党に配慮して、年収760万円未満世帯の私立高校の授業料無償化を実現した。これで都内に住む私立高校に通う3割の生徒が補助金の対象となった。
小池知事と公明党の距離感に注目が集まる。
(文=編集部)