小池百合子、「スポットライト症候群」の可能性…常に人々からの注目を欲求 精神科医が解説
小池百合子東京都知事が、新党「希望の党」を設立した。しかも、民進党との事実上の合流に向けて最終調整に入っているというのだから、びっくり仰天だ。昨年の都知事選でも感じたことだが、ここぞというときの勝負勘と度胸、そして勝つために必要なことを電光石火のごとく行動に移す実行力は天才的である。
この勝負勘と度胸、そして実行力はどのようにして培われたのか? もちろん天性の勝負師なのだろうが、それだけでなく、細川護熙元首相の日本新党立ち上げに参加したり、小泉純一郎元首相の郵政解散では自身も刺客として立候補したりして、その手法を間近で学んだことも大きいように思われる。小池氏が学んだのは、大衆の注目と支持を集めるにはどうすればいいのかということだろう。
これこそ劇場型政治の手法にほかならないが、こうした手法は小池氏の性格と親和性が高いのではないか。というのも、小池氏は、自己顕示欲が強く、常に注目を浴びていないと気がすまない「スポットライト症候群」のように見えるからだ。
このタイプは、自分が注目を浴びるにはどうすればいいのかを第一に考えて行動する。だから、昨年の都知事選に小池氏が立候補した一因に、第二次安倍政権ではスポットライトを浴びられず、重要閣僚に抜擢された他の女性政治家が日本初の女性宰相になるのではと取り沙汰されたことがあると筆者は見る。
こういうことを書くと、小池氏を単なる目立ちたがり屋と揶揄しているような印象を与えかねないが、それは筆者の本意ではない。「スポットライト症候群」の人は、注目を浴びるために並々ならぬ努力を積み重ね、それが成功につながることも少なくない。つまり、プラス面もあるわけで、小池氏の場合も、政治家としての成功に「スポットライト症候群」の資質が貢献したことは、否定しがたい。
敵をつくる天才
しかも、自分が脚光を浴びるためなら、少々の侮辱や批判などものともしない。いや、むしろ、自分が受けた侮辱や批判を逆に利用することさえある。たとえば、昨年の都知事選の際、石原慎太郎元東京都知事が「厚化粧の大年増」と小池氏を侮辱したが、その翌日、小池氏は「私は今日は薄化粧で来ました」とさらっと言い放った。実に見事だった。石原氏の暴言が小池氏への同情と石原氏への反感をかき立てることを計算したうえで、暴言を逆手に取ったのだろう。
この暴言によって石原氏が敵とみなされたことは、容易に想像がつく。その石原氏の証人喚問が都議会百条委員会で行われたことは記憶に新しい。このように、わかりやすい敵をつくって攻撃することで大衆の注目と支持を集めてきた小池氏が、これからは誰を敵とみなして攻撃するのか、非常に興味深い。
「希望の党」が目指すしがらみのない政治や日本のリセットの前に立ちふさがる「抵抗勢力」なのか、それとも石原氏と同様に不用意な暴言を吐く既成政党の政治家なのか。いずれにせよ、小池氏から敵と認定されたら、どんなしっぺ返しを食らうかわからないので、賢明な政治家ほど小池氏を刺激する発言を慎むだろう。とはいえ、暴言を吐く政治家がいないとも限らない。それを小池氏は虎視眈々と待ち構えているはずである。
(文=片田珠美/精神科医)