新型コロナウイルス感染症患者の受け入れをめぐる不適切な発言や、滝川市立病院からの高額報酬などの問題が指摘されている旭川医科大学(北海道旭川市)の吉田晃敏学長が、学長職の解任を要請する同大の医学部医学科同窓会(会長・原渕保明同大教授)に対する奇妙なメール(次ページ参照)を教職員向けの学内メーリングリスト(ML)に送信していた疑惑が浮上している。複数の医療従事者がTwitterなどで告発した。
当編集部が怪文書の可能性も含めて真偽を確認したところ、複数の同学関係者がこのメールの存在を認めた。
同メールで吉田学長は、原渕同窓会長に対し「私は、残念ながら、『先生のような』力量も人格の高潔さも持ち合わせておりませんが、同窓会を長年率いてきたいくばかりかの誇りはあります」「私が、社会の不安と不信を募らせ、本学の名誉と信頼を著しく損ねる一連の不祥事を引き起こした、とのお優しいご指摘です」(原文ママ、以下同)などと皮肉ともとれる表現が散見された。
また「今回、なぜ先生が私に着目し、私の足を牽引させているかは、学内の全ての方々は知られているようですが、私の頭脳では計り知れないものがあります」と原渕会長らによる解任要請の裏事情をほのめかすような文言もあった。
同窓会は2月26日~3月14日に一連の問題に関する吉田学長の責任について、学外に勤務し連絡先を把握している会員1937人にアンケートを実施。約2割にあたる386人から回答を得たという。同アンケートで「辞任すべき」「どちらかというと辞任すべきだ」との回答が95.3%を超えたことを踏まえて、3月26日、吉田学長の処分を検討している学長選考会議に、学長職の解任を要請したことを記者発表した。
また同大有志でつくる「旭川医科大学の正常化を求める会」も全職員の半数を超える1106人分の「吉田学長の辞任を求める署名」を集め、学長選考会議に提出している。
仮にこのメールが怪文書で、何者かが吉田学長の名前を騙って文面を作成したのであれば法的な問題が生じる可能性がある。当編集部は旭川医科大総務部に、同メールが吉田学長が送信したものかについて真偽を問い合わせているが、8日午前10現在、回答はない。回答があり次第、追記する。以下、メール本文を原文ママで引用する。
【9日午後3時半 追記・更新】
その後、同大総務部総務課広報基金係から以下のような回答があったので追記する。
「大学としてお答えする内容ではないことから、回答は差し控えさせていただきます」
吉田学長のメール
旭川医科大学の同窓会を設立し(昭和53年11月、第1期会長)、育んできた同窓会に私がその名誉と信頼を著しく損ねたことに対するお詫び
令和3年3月30日
旭川医科大学医学部医学科同窓会
会長 原渕 保明様
原測保明会長、そして同窓会の皆さん、この度は、私に対するアンケート調査を386名にもわたる多くの方に施行して頂き、厚く御礼申し上げます。令和3年3月26日、その結果を頂きました。少しく申し上げたいことがあり、筆をとりました。
現在、同窓生は4652名もおります。そのうち、1937名にアンケートをご依頼して頂き、386名(8.3%)にあたる会員からご親切な回答を頂いたと聞いています。
その結果、全同窓生の4652名うち、少なくとも341 名 ( 7.3 % )が「吉田晃敏学長が学長を辞任すべきである」という結果だそうです。
原渕保明会長のご意見によると、私が、社会の不安と不信を募らせ、本学の名誉と信頼 を著しく損ねる一連の不祥事を引き起こした、とのお優しいご指摘です。
原渕会長は、色々とその理由を分析され、私に確認を取ることなく北海道新聞その他全国マスメディアに発信されました。
この点は、同窓会を創設したものとして、極めて恥じ入っております。原渕会長は、もとより人格が高潔であります。
思い出せば、先生が旭川医大を卒業され、札幌医大の耳鼻科にいらっしゃったときに、 あまりにも優秀であったことから私が声をかけ、本学の教授に挑戦することをアドバイス しました。
以来、スライドの作成、講演原稿の直し(当時はパソコンが無かったのでFaxでのやり取りでしたが) 等 で、私も多少なりとも協力をさせて頂きました。
以来、大きな学会を開き立派な教授として成長され、そしてまた、第3代目の同窓会長として君臨されています。
私は、残念ながら、「先生のような」力量も人格の高潔さも持ち合わせておりませんが、同窓会を長年率いてきたいくばかりかの誇りはあります。
今回、なぜ先生が私に着目し、私の足を牽引させているかは、学内の全ての方々は知られているようですが、私の頭脳では計り知れないものがあります。
先生の前途が益々輝かしいものであることを心から祈念し、私が先生に対して抱いている感謝の気持ちの何百倍をここに示させて頂きます。
吉田晃敏
(文=編集部)