「ポスト平成」は脱デフレの時代に
――安倍政権が目指す憲法改正も、2020年までの実現が取り沙汰されています。
渡邉 政治的にも、2019年には統一地方選挙と参議院議員選挙が行われます。同時期に改憲が実現すれば、日本は名実ともに新たなフェーズに突入することになるでしょう。いずれにせよ、この2~3年はさまざまな面で節目や区切りを迎え、時代の大きな転換点といえます。
――「ポスト平成」はどんな時代になると予想されますか。
渡邉 かつてのバブルほどではないですが、人々が再び夢や希望を持てるような世の中になるのではないでしょうか。デフレはモノの値段を下げて企業の収益を減少させますが、「失われた20年」でもっとも失われたのは市井の人々の夢や希望だったのではないかと思います。
真綿で首を絞められるように悪化し続ける経済状況において、企業はリストラとコストカットを余儀なくされ、個人は浪費を抑制するようになりました。その結果、消費マインドは一気に落ち込み、さらにデフレを加速させる要因となっていったのです。
そんな状況で「大きな希望や果てしない夢を持て」というほうが無理でしょう。しかし、夢や希望がなければ未来に向けての投資は進まず、国家の繁栄にもつながりません。そして、ようやくデフレからの脱却と右肩上がりへの転換が見え始めたなかで、激動だった平成が終わる。これには大きな意味があると考えます。
2018、世界最大のリスクは「中国の覇権拡大」
――日本が転換点を迎えるなか、世界情勢はどう動くのでしょうか。
渡邉 世界は、かつての冷戦の時代に逆戻りしています。「自国第一主義」を貫くアメリカと、そのアメリカとの間で「新型大国関係」を模索する中国による、新たな冷戦がすでに始まっています。そこに、北朝鮮や中東などの偶発的なリスクがからみ合ってくるため、先の見えない混沌とした状況が続いているわけです。ヨーロッパ連合(EU)による統合を目指していたヨーロッパも、2019年3月までにイギリスがEUから離脱するなど、分裂と混乱が収まりません。
2018年は、世界経済の転換点となったリーマン・ショックから10年という時期です。この10年は、換言すれば米中による覇権争いが続いた10年でもありました。リーマン・ショックによってアメリカの弱体化があらわになり、そこにつけ込むように中国が大きく存在感を高めていったのです。
2012年に発足した習近平政権は、「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)などアメリカの一極支配を崩すような政策を打ち出し、南シナ海では軍事拠点化を進め、東シナ海では尖閣諸島沖で領海侵犯を繰り返したり強引な資源開発を行ったりしています。
アメリカの調査会社であるユーラシア・グループが2018年の世界における10大リスクを発表していますが、1位は「中国は真空状態を愛す」というものです。表現が独特ですが、これは国際的にアメリカの存在感が低下する間隙(真空状態)を縫って中国が影響力拡大に動く状況を表したものです。ちなみに、2位は北朝鮮やシリアにおける「偶発的なアクシデント」、3位は「世界的なテクノロジーの冷戦」となっています。
『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0:2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序』 平成から次の時代へと動き始めた日本。日経平均もバブル崩壊後の高値を更新、デフレ脱却が本格化しつつある。米中ロの冷戦復活、そして東京オリンピック開催は、昭和の高度成長期とそっくりで、歴史が再び繰り返されようとしている。この先、日本と日本経済に何が起こるのか、そして「2018年の世界最大リスク」とされた中国の動向、混乱が続く朝鮮半島の行方、分断が進む欧米の帰結は。気鋭の経済評論家が完全分析!