――その中国では、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」が共産党規約に盛り込まれ、憲法にも明記される予定です。
渡邉 党規約に個人の名を冠した思想が入れられるのは、中国建国の父である毛沢東氏と改革開放で近代化を成し遂げたトウ小平氏以来の出来事です。「習近平思想」はいわゆる“先祖返り”的な思想であり、今後はさまざまな分野で社会主義的要素が強まることが予想されます。
しかし、中国経済がすでに行き詰まっていることは周知の通りです。2015年夏の株式バブル崩壊を金融規制と大規模な資金供給などで乗り切りましたが、ダブついたマネーが不動産バブルを引き起こし、今は高すぎる不動産価格と多すぎる不動産建設計画が大きな問題となっています。不動産市場は供給過剰の状態が続いており、「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンが至るところに生まれているのです。
2017年12月には、人民元市場で越年資金をめぐるクレジットクランチ(信用収縮)が発生していますが、中国経済がハードランディングすれば世界的なリスク要因となることは必至です。
米国、輸入制限で中国製太陽光パネルを狙い撃ち
――政治的にも経済的にも、中国が世界のリスクとなり得るということですね。
渡邉 北朝鮮問題の陰に隠れてはいますが、ドナルド・トランプ政権発足当初の世界の最大の懸念は米中による経済摩擦でした。この流れは今も続いています。
先日、アメリカは太陽光パネルと洗濯機を対象に、米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を約16年ぶりに発動しました。太陽光パネルは中国企業、洗濯機は韓国企業を狙い撃ちにしたものとみられています。これにより、一定量以上の輸入に対して太陽光パネルは関税が最大30%引き上げ(今後4年間)、洗濯機は同じく最大50%引き上げ(今後3年間)られます。
また、EUも中国のダンピング(不当廉売)製品の排除に動いています。2017年12月にEU域内で販売される輸入品がダンピングか否かを認定するための新たな貿易ルールを発効させたのです。これにより、政府による市場介入で「市場価格が著しくゆがんでいる」と判断した国などに対して対抗措置を取りやすくなります。同ルールの最初の標的になったのは中国です。
2018年も、覇権拡大に動く中国を欧米が押さえつけるという構図は続くでしょう。
(構成=編集部)
『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0:2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序』 平成から次の時代へと動き始めた日本。日経平均もバブル崩壊後の高値を更新、デフレ脱却が本格化しつつある。米中ロの冷戦復活、そして東京オリンピック開催は、昭和の高度成長期とそっくりで、歴史が再び繰り返されようとしている。この先、日本と日本経済に何が起こるのか、そして「2018年の世界最大リスク」とされた中国の動向、混乱が続く朝鮮半島の行方、分断が進む欧米の帰結は。気鋭の経済評論家が完全分析!