菅義偉総理は25日、会見を開き、「全国の新規感染者数は、先月から増加が続き、大阪府と兵庫県では、医療提供体制がこれまでになく厳しい状況にある。また、感染力の強い変異株は、大阪府、兵庫県では、感染者のおよそ8割を占め、東京都では、およそ3割まで増えている」と指摘し、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に緊急事態宣言を出すとともに、愛媛県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決定しました。
更に「重点措置」が適用されている宮城県と沖縄県についても、5月5日までの期限を11日まで延長することも決定しました。
菅総理は「今回の緊急事態宣言は、ゴールデンウイークの短期集中対策として、飲食の対策を強化するとともに、いったん人の流れを止めるための強力な措置を講じるものだ」と述べましたが、東京では昨年4月の緊急事態宣言から本年1月の第2回目も期間は1カ月程度であり、今回の3回目は17日間でしかありません。
あまりにも拙い小池都知事のコロナ対策
小池百合子東京都知事は27日夜の記者会見で、昨年の“STAY HOME”で感染者2名にまで抑えられたことから、「今回は前回よりも徹底した法的根拠を持った人流抑制で対応していく」と言います。変異株N501Yの脅威を訴えつつ、これまでで最短の17日間の人流抑制で効果があるのか、疑問しか感じないというのが正直な気持ちです。
昨年、不要不急の外出自粛要請をした時と比べ、明らかに感染者の数は増加の一途をただっています。にもかかわらず、外を出歩く人たちの数にもその気持ちにも危機感は微塵も感じられない印象を受けます。
小池都知事はマスメディアに対して“伝え方”に関する要請もしましたが、行政の行っている事がどういう結果を生んでいるか理解されたうえでの要請とは思えなくなっています。
国政でも立憲民主党は、感染者が医療機関の指示を無視した際の罰則を無くすという愚策を政府に押し付けコロナ対策を骨抜きにしています。
SNS上では“コロナ自粛警察”が跋扈
一方、Twitterなどを見ていて暇を持て余しているのか、見えない先行きが精神状態を悪化させているのか、最初の緊急事態宣言に登場した“自粛警察”のような動きがSNS上でも見られるようになっています。SNSの中でのトラブルを現実に持ち込み、歪んだ正義感で匿名の個人を特定し、大挙して自宅に押しかけ、その打ち上げの模様をツイートするなど、一歩間違えればクラスターを引き起こしかねない愚行をする者達も散見されます。いわゆる“路上飲み”なども最近が話題ですが、自粛意識を薄弱させる大変危険な行為であると考えます。
当人達は、自身が健康である事を疑う余地も無いのでしょうが、「不要不急の外出は避ける」「酒席などがクラスター発生の温床」と言われている中で、敢えてそのような行為をSNSで世界中に向けてアピールする事がおかしいと思わなくなってきています。そうした行為が、ソーシャルディスタンスや感染対策を取っているイベントや店舗などにも直接的、間接的に悪影響を及ぼしている結果になっているのではないでしょうか。「緊急事態宣言の対象地域外であるから良い」「自分の真実・正義の為ならば問題ない」という狂った感情がこの1年で増加しているのは間違いないでしょう。
新型コロナウイルス感染症は「感染→潜伏期間→発症→完治」までのサイクル内で、自覚症状の無いタームでも他人に感染させる可能性があり、人流抑制は必要です。罹患者を減らしたいのであれば、行政は最低2カ月から3カ月は他者との接触を避けるような指導を行うべきです。中途半端な期間の自粛、諸外国と違いロックダウンが出来ないこと、一部の人々の「野放図にして気ままな行動」に苦言を呈してこなかった結果が、国民に放埓な行動を起こさせている一因になっているのではないでしょうか?
3月に執り行われた千葉県知事選挙においても「コロナは茶番」だなどと放言する候補者が出馬していましたが、いかに選挙が自由に意思を訴える事が出来る場だとはいえ、世界中で未曾有の危機に立ち向かっている中、個人の命にもかかわって来るような言動に対しては、規制する事は出来ずとも政府、行政としての見解を注釈するべきとも思います。
プロ野球、日程延期ではなく「無観客開催」という愚行
そうかと思えば、吉村洋文大阪府知事は何の根回しも無く、スポーツイベントは原則「無観客か延期」と発言し、今回のプロ野球の無観客試合開催という大罪の流れを作りました。
プロ野球の臨時実行委員会は会議前から「パ・リーグ6球団は無観客もやむなし」の姿勢で一致しました。
パ・リーグ関係者は「対象球団は大阪・兵庫を本拠地にするバッファローズだけで集客も他球団と比べて少なく、ならば政府に忖度全面協力し今後、自球団の地域に宣言が発令された際に不利にされぬようにした」と話します。
一方、セ・リーグではジャイアンツ、スワローズの期間中全試合の延期を求める案に、屋外球場が本拠地の一部球団が強硬に反対しました。全試合を延期した仮日程を組むと、シーズン最終戦がクライマックスシリーズ初戦の前日までかかります。そのため雨天中止を2試合抱えるタイガースは日程消化を優先し、全試合の無観客開催を受け入れてしまいました。
スポーツにせよ、コンサートにせよプレイヤーやアーティストはオーディエンスとのつながりがそのパワーになっている事は間違いないでしょう。私自身も1月30~31日に武道館で予定されていたライブが無観客放映になった事で、アーティストだけでなく会場の他のファンとの一体感が損なわれたことによる虚しさを感じました。
プロ野球も昨年から観客動員数制限を設け、鳴り物(現在は応援の鳴り物だけは録音を使用)や応援歌が禁じられ、歓声を上げる事も規制されています。それでも、ファン達は取りにくいチケット争奪戦の中、球場に通い応援する事を楽しみにしています。
球場の観客制限も5000人から50%減になったばかりにもかかわらず、ここに来ての無観客開催。政府も一方的に命じるだけ、小池都知事に至っては「STAY HOMEの為にも無観客開催で、自宅で観戦に努めて欲しい」などと暴言を放ちました。私事で申し訳ない話ですが、地上波の低俗さに嫌気がさすのとNHK受信料の支払いを拒否するため、私の家にはテレビはありません。スマホもiPhoneです。ワンセグすら見る環境を持ちませんので、テレビで野球観戦は不可能です。
ジャイアンツ戦やタイガース戦は多くの局で放送されます。しかし地上波での放映が少ないヤクルトスワローズファンの私が、中継をディスプレイやスマホで観ようとするには中継局やサイトとの新たな契約が必要になってしまうのです。
画面で中継を観るのと現地で応援する事の臨場感の差も大きく、比べ物にならぬ事は先述した通りです。小池都知事がSTAY HOMEの観点から無観客試合を球団に命ずるのであれば、視聴者側にも試合を最低限受信できる支援をすべきではないでしょうか?
東京五輪中止についての質問に小池都知事は、「開催について変更はなく都として安全・安心な大会を運営していく」と断言しています。一方で、東京オリンピックでも本拠地である明治神宮球場の使用制限でセ・リーグや大学野球に負担をかけ、国立競技場でもサッカー、ラグビーをはじめ多くのスポーツ、コンサートなど多くのイベントが犠牲となっています。口では「それぞれの健康・命、経済の命を守る」と言いながら在京球団の保護やファンの支援といった血の通った政策が見受けられないのは誠に遺憾です。
(文=新日本帝國/政治・社会ジャーナリスト)