GoogleやAppleも情報提供 日本で進む企業の「社員監視」と“監視先進国アメリカ”の実態
GoogleやFacebookなどの大手インターネットサービス会社を通じて、米国家安全保障局(NSA)と米連邦捜査局(FBI)が個人情報を収集していたことが6日、英ガーディアン紙のスクープで明るみに出た。その続報を各メディアが伝えている。
日本経済新聞の7日夕刊によれば、NSAとFBIが情報収集に利用していたのは、GoogleやFacebook、Appleなど9社。「PRISM」と呼ばれるプログラムを利用し、電子メールや接続記録のほか、Facebookへの投稿やYoutubeでの閲覧記録などを広範囲に収集し、人物の行動履歴などの監視に役立てていたという。
この問題に絡み、政府に協力していたとの批判にさらされていたFacebookとマイクロソフトは14日、政府による情報提供の件数をそれぞれ公表している。15日配信の日本経済新聞web刊によると、2012年後半に情報提供が求められたのは、Facebookが9000~1万件、マイクロソフトは6000~7000件。両社はサービスの利用実績に対して、要求は極めて少ないと主張している。
この波紋は欧州にも広がっており、NSAと協力関係にある通信傍受機関・英政府通信本部(GCHQH)が、PRISMを利用していた疑いがあると、朝日新聞の12日朝刊が報じている。英国のヘイグ外相は10日の議会で「我々の情報機関は、英国外からの情報を扱う際も常に法律を守っている」と強調したものの、PRISMの利用を肯定も否定もしなかった。EU加盟国は不信感を募らせており、ベルギーのフェルホスタット元首相は「EU加盟国の国民の間だけで買わされるものであっても、すべてのメールや電子情報が米情報機関に傍受されうる。EU市民のプライバシーに深刻な影響をもたらす」と危惧している。
日本人にとっても、この問題は他人事ではない。オバマ大統領は7日、カリフォルニア州サンノゼ市で開かれた集会で記者団の質問に答え、インターネット上の情報収集について『米国市民や米国在住者を対象にしたものではない』と強調している(日本経済新聞8日夕刊)。つまり、情報収集の対象にされたのは、米国から見た外国人。当然、日本人も含まれるのだ。
今回、NSAに協力したとされる企業は、Google、Yahoo!、マイクロソフト、Apple、Facebook、Skype、AOLなど、日本人にもユーザーの多いサービスばかりだ。ジャーナリストの瀧口範子氏はNewsweek日本版に15日掲載されたコラムで、「外国製品を使っていたら、その中に盗聴装置が仕組まれていたようなもの」と、知らない間に監視されていた可能性があることに不快感を示している。また、「監視されること自体が束縛の始まりと意識することが重要だ」と危機意識を持つように促した。
アメリカは“監視先進国”として知られ、国からの監視だけではなく、企業の“社員監視”の過酷さも度々話題になっている。オンラインメディアMediaSaborに起稿した、米国在住ジャーナリストの形山昌由氏によれば、08年2月の段階で、すでに66%の企業が社員のネット利用を監視(米調査会社インフォワールド調べ)。 就業時間中の不適切なサイトへのアクセスはもちろんのこと、社内間のメールに攻撃的な言葉を用いたり、侮辱したりしても解雇に結びつくと回答した企業が62%に上ったという。
そして日本の職場でも、監視による個人情報の収拾が始まっているようだ。17日発売の「日経ビジネス」では、「社員は見られている ここまで来た監視社会の現実」というタイトルで、企業における監視を中心に、日本における監視社会の実態を特集している。