ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 小池都知事の豊洲移転強行に猛反発!
NEW

豊洲市場、ヒ素や基準170倍のベンゼン検出…小池都知事は移転強行

文=片田直久/フリーライター
【この記事のキーワード】, , ,
豊洲市場、ヒ素や基準170倍のベンゼン検出…小池都知事は移転強行の画像1豊洲市場への移転差し止めを求める原告団の様子

 築地市場(東京都中央区)の豊洲移転問題が、また新たな局面を迎えた。築地で働く仲卸業者と関連業者、その家族ら56人が原告・申立人となり、9月19日、東京都を相手取って豊洲市場への移転差し止めを求める訴訟と仮の差し止め申し立てを行ったのだ。

 原告・申立人は同日、司法記者クラブで会見を開いた。司会役を務めた豊洲市場移転差止弁護団団長の宇都宮健児弁護士は、訴訟と申し立ての概要を説明。論点は以下の3つに集約できる。

(1)豊洲移転は東京都による強行策

 小池百合子・東京都知事は7月31日、豊洲市場の「安全宣言」をぶち上げた。「わざわざ『安全』と言明しなければならない市場など、どこにあるのか」との異論は、市場内外でささやかれている。

 翌8月1日、都は豊洲市場に関する認可申請を齋藤健・農林水産大臣に行った。市場の認可は農水大臣の所管である。齋藤大臣は9月10日に認可。都は自らが立てた予定に従い、10月11日に豊洲市場を開場すべく移転を強行する構えである。

(2)豊洲市場の土壌汚染問題は未解決

 豊洲移転に向けて、都は「無害化3条件」の実施を市場関係者や都民に約束してきた。

・土壌汚染対策の確実な実施
・東京ガス工場操業由来の汚染物質を完全に除去・浄化
・土壌・地下水の汚染も環境基準以下にする

 この3つだ。だが、この3条件は有名無実化している。今年6月の地下水調査において、土壌汚染対策後最大となる環境基準170倍のベンゼンが検出された。猛毒のシアンも23カ所中17カ所で検出されている。海抜1.8メートルで維持管理することになっていた地下水位は、当面の目標である2.0メートルすら達成できていない。小池知事の「安全宣言」の根拠はどこにあるのだろうか。

(3)多くの業者は移転の中止・凍結を求めている

 豊洲市場の建物の使い勝手の悪さは再三指摘されてきた。実際に現場で働く業者の意向を聞かずに設計されたためだ。「交通アクセスが悪い」「駐車場が不足している」「床積載荷重問題でフォークリフトが使えない」など、問題が山積している。

 豊洲移転に反対する、築地で働く女性たちからなる「築地女将さん会」は今年3月、水産仲卸の535業者を対象にアンケート調査を行った。262業者(48.6%)が回答。全体の7割が移転の中止か凍結を求めている。

 原告・申立人は憲法上の権利である「人格権」に基づき、豊洲移転の差し止めを請求する。個人の生命・身体・精神および生活に関する利益は各人の人格に本質的なもので、その総体を人格権と呼ぶ。

「無害化3条件」がまったく履行されていない豊洲市場では、食の安全・安心の確保はままならない。移転がこのまま強行されれば、消費者の不安・不信は増大する。仲卸をはじめとする業者は大きな打撃を受け、事業の継続は難しくなる。

「いまだに地下水などから環境基準を大幅に超えるベンゼン、シアン、ヒ素が検出されている。日常的に豊洲市場で働くことになる仲卸業者の健康が脅かされ、身体・生命の安全が害される危険性が極めて大きい」(宇都宮氏)

「お店が死んでしまいます」

 都は、10月11日に豊洲市場への移転を強行する構えだ。訴訟の判決を待っていては、築地で働く人たちに重大な損害が生じる。そのため、訴訟とあわせて移転の仮の差し止めを求める申し立てを行うかたちとなった。

「このまま、なし崩しに豊洲へ行くわけにはいかない」

 会見に登壇した仲卸業者らは、口々に主張する。築地ブランドの本質は仲卸業者ら、そこで働く人々の経験に基づいている。仲卸業者の「目利き」を生かした「セリ取引」によって、品質を競争条件とする適正な価格形成がなされてきた。

「お店が死んでしまいます」

 ある仲卸業者は、苦悶の表情でそう告げた。豊洲移転で問われているのは、特定の業者のエゴなどではない。東京都民はもとより、全国津々浦々に至る「食の安全・安心」が危機に瀕している。築地市場の開場以来、83年にわたって農漁業者などの生産者と八百屋、魚屋、飲食店、さらには消費者を守ってきた仕組みが壊されかねない事態だ。

 原告らは9月29日にデモを計画している。築地市場の正門前から新橋を経て農水省に至るルートを往復。「これから100年続く築地市場」をアピールする。

 東京都庁は、取材に対し「どの部署が対応するか定かでないので、確認ができ次第、返答する」と答えた。いつまでに対応するのかと重ねて問うと、「わからない」と返答し、電話を切った。担当者は氏名すら名乗らなかった。
(文=片田直久/フリーライター)

片田直久/フリーライター

片田直久/フリーライター

1968年宮崎県日向市生まれ。出版社、編集プロダクション勤務を経て、現在はインディペンデントとして政治や医療、経済、抵抗文化などの分野で企画・取材・執筆・編集に携わる。渡世上の師は作家・大下英治。2020年よりYouTube「前田日明チャンネル」で合いの手を担当。日本ジャーナリスト協会運営委員。著書に『タモリ伝』(コア新書)。

Twitter:@KATADANaohisa

豊洲市場、ヒ素や基準170倍のベンゼン検出…小池都知事は移転強行のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!