来年の天皇陛下のご退位と皇太子殿下のご即位に伴う「即位の礼」や「大嘗祭」などの重要儀式をめぐり、憲法が定める政教分離と国民主権の原則に反するとして、市民が国を相手取り、儀式への公金支出の差し止めを求めて東京地裁に提訴する準備を進めていると一部で報じられた。
提訴は12月上旬を予定しているとのことで、「訴状」を見ていないので正確ではないかもしれませんが、おそらく行政事件訴訟法第3条第7項の「差止めの訴え」を提起するのでしょう。
この種類の裁判は、国や県などの「行政機関」がなんらかの行動(工事をする、予算を執行するなど)をしようとする際に、本来であれば、法律やその他の理由によりやってはいけない、やるべきではない場合に、その行政機関の行動を、司法である裁判所に差し止めてもらう手続です(裁判所に、仮の判断を求める手続きもあります)。最近では「原子力発電所の建設や運転を差し止める訴訟」などが有名です。
なお、すでに行われてしまった行政の行動を、あとから「やめろよ!」という訴訟は、「処分の取消しの訴え」といいます。最近では、「競輪の場外車券売り場設置の設置許可を取り消す訴訟」が有名です。
さて、報道によると、「キリスト教、仏教などの宗教関係者」が原告となるようです。
今の段階でわかっている情報から想定される「訴状」の中身は、おおよそ次のようなものです。
・憲法は、政教分離(憲法第20条第3項が規定する「国などは、宗教教育や宗教活動を行ってはならない」という原則)を規定している
・即位の礼や大嘗祭は宗教活動である
・したがって、宗教活動である即位の礼や大嘗祭に予算を使うことは、憲法に違反するから、差し止める
原告は弁護士に依頼して訴訟提起するのでしょうから、それなりの勉強をしてそれっぽいことを書いてくるのでしょう。しかしながら、日本国憲法が明記する「天皇制度」を宗教と勘違いしている点で間違っています。東京地方裁判所が、却下なり棄却を判断することを切に望みます。