『笑ってはいけない』以前の日テレ・大みそかの風物詩『年末時代劇スペシャル』の光と影
あなたにとって「懐かしい」とは、どんな情景でしょうか? 1970~90年代の「懐かしい」を集めたのが「ミドルエッジ」。あなたの記憶をくすぐる「懐かしい」から厳選した記事をお届けします。
今回のテーマは、『年末時代劇スペシャル』。『笑ってはいけない』が始まるはるか以前、1985年から93年にかけて、日本テレビの年末を彩った同シリーズについて振り返ります。
日テレ・大みそかの風物詩といえば、今は『笑ってはいけない』ですが……
2018年で13回目を迎える大みそか・日テレの『笑ってはいけない』シリーズ。同シリーズが年末年始特番になる前、ダウンタウンの松本人志はラジオ番組『放送室』(TOKYO FM)の中で、『NHK紅白歌合戦』の“裏番組”の在り方について、次のような持論を展開していました。
「紅白のウラで民放は毎年違うことやるやろ? ずっと同じことやれって!」「2~3年じゃ無理やで。10年単位くらいでやれば、大みそかの風物詩的なものになってくるから」
その言葉通り、毎年地道に継続した結果、『笑ってはいけない』は、紅白の裏番組として8年連続で民放首位の視聴率を記録するような、年末の風物詩的コンテンツに育ったわけですが、かつて日テレの12月31日といえば、まったく毛色の違う番組が定番化していたものです。それが1985年から93年にかけて、12月30日・31日の2夜連続(91年・92年は12月31日のみ、93年は12月28日のみ)で放送されていた『年末時代劇スペシャル』でした。
9作品中5作品が幕末ものだった『年末時代劇スペシャル』
今でこそ、視聴率30%台が当たり前、40%いけば万々歳な『紅白』ですが、80年代前半までは視聴率70%を優に超える正真正銘の国民的番組でした。そんなオバケコンテンツを前に、『コント55号の紅白歌合戦をぶっ飛ばせ!なんてことするの!?』(75年~77年・日テレ系)、『必殺現代版 仕事人vs暴走族』(82年・テレ朝系)など、各局が試行錯誤と破れかぶれを繰り返すなか、85年に誕生したのが『年末時代劇スペシャル』です。
記念すべき第1回に放送されたのは、「忠臣蔵」。主人公・大石内蔵助を里見浩太朗が、その息子・大石主税を若き日の坂上忍が演じて好評を得ました。それ以降の作品・主演は次の通り。
放送年 タイトル(主演/役)
1985年 忠臣蔵(里見浩太朗/大石内蔵助)
1986年 白虎隊(森繁久彌/会津藩士・井上丘隅)
1987年 田原坂(里見浩太朗/西郷隆盛)
1988年 五稜郭(里見浩太朗/榎本武揚)
1989年 奇兵隊(松平健/高杉晋作)
1990年 勝海舟(田村正和&田村亮/勝海舟)
1991年 源義経(野村宏伸/源義経)
1992年 風林火山(里見浩太朗/山本勘助、高坂昌信)
1993年 鶴姫伝奇(後藤久美子/鶴姫)
ご覧のように、9作品中5作品が幕末ものとなっています。時代の流れに翻弄されつつも、たくましく生きる歴史上の人物たちの物語は、年末の暇な時間にじっくり腰を据えて見るのに最適なものでした。
1作目、2作目は高視聴率をマーク。しかし、90年からは……
『忠臣蔵』で好評を得た年末時代劇スペシャルは、2作目の『白虎隊』で早くも沸点に。シリーズ最大のヒット作になり、堀内孝雄による主題歌『愛しき日々』も大ヒット。4作目『五稜郭』では、映画『ゴジラ』シリーズでお馴染みの特技監督・川北紘一指揮のもと、大規模な海戦シーンが展開されて話題を呼びました。
しかし、90年代に入ると、民放各局の紅白裏番組が充実してきた関係もあって徐々に低迷。92年に放送された『風林火山』で大みそかから撤退し、翌93年には後藤久美子主演の『鶴姫伝奇』を12月28日に放送して起死回生を狙うも、やはり視聴率は伸びず、同作をもって年末時代劇は打ち止めになってしまいます。ちなみに、この『鶴姫伝奇』が放送された93年の12月31日に放送されたのが、『ガキの使い』のスタッフが制作指揮を執った『ダウンタウンの裏番組をブッ飛ばせ!!』でした。
かつて日テレ・大みそかの風物詩だった「年末時代劇スペシャル」が終わった年に、その後、現在まで続く新たな風物詩を手掛けた面々にバトンが渡されるとは、なんとも奇妙な偶然ではないでしょうか――。
この連載では次回以降も皆さまの脳裏に「懐かしい」が蘇りそうな記事を提供して参ります。「こんな記事は?」「あのネタは?」なんてお声も、お待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
(文・構成=ミドルエッジ)
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