昨年、大晦日に行われたフロイドメイウェザー対那須川天心。このマッチメイクが決定する以前から、筆者はある人物からメイウェザーという超大物が来日し、リングに立つに至った経緯について話を聞いていた。それは“世紀の一戦”といわれたマニー・パッキャオとの再戦、もしくは知名度の高い選手とのエキシビションマッチを日本国内で行うべく、動き出しているというものであった。
この時点では、対戦相手として那須川の名前は出ていなかった。ある人物たちのルートで日本へと持ってこられたメイウェザーの興行の話は、すぐさま業界関係者の間にも広まり、大手企業がメイウェザーの興行を実現するべく名乗り上げた。しかし、この企業がすぐに撤退。後に続こうとしていた有名企業らも、次々に手を挙げようとしては、それを踏みとどまらざるを得ないことになったのだった。それには理由があった。
「メイウェザーの興行は、裏で総長クラスの有名な親分らが取り仕切っているといわれており、巨大マネーが動いているといわれていた。その中のひとりが、『週刊文春』(文藝春秋/1月17日号)でも報じられているが、“政財界のフィクサー”といわれる人物の息子さんだ。そういった噂が広まったので、大手企業らはすぐに撤退したという話だ。格闘技界では今でも大きな興行になると、裏社会の人物が介在してくることは珍しくない。それを理解しながら、興行に手を出す企業も少なくなかった。ただメイウェザーの興行は大きすぎる。大きすぎると、後で必ずといっていいくらい揉める。それらのリスクを考えて、どの企業も尻込みしたのではないか」(業界関係者)
そういった状況の中で名乗りを上げたのが、大晦日に大きな興行を打つことが決まっており、目玉になる試合を探していたRIZINだというのである。
「メイウェザーの興行には、そういった背景があったのを『週刊文春』でも掴んでいたからこそ、対那須川戦の際に環境副大臣が上がり、花束を贈呈したことを記事にしたのではないか」(同)
「週刊文春」では、リングに上がった環境副大臣である秋元司衆院議員について、軽率な行動であったかのように記されている。この興行にかかわった人物たちは、カジノ利権に食い込むことを狙い、カジノ推進派である秋元議員に近づいたと指摘し、脇が甘いと批判しているのだが、いまいちパンチに欠ける記事だった。ここには書ききれなった「なにか」がある気がするのだ。
「文春サイドでは、秋元議員とつながる“ある人物”について調べていたのではないでしょうか。仕手師として暗躍する人物で、過去に逮捕歴もあり、秋元議員との関係も噂されてきました。メイウェザー来日実現のキーマンのひとりであった、この人物とのつながりを立証できれば大スキャンダルだったのでしょうが、確証が取り切れなかったので、少しぼやけた記事になってしまったのだと思います」(ジャーナリスト)
今回のメイウェザーのファイトマネーは約10億円ともいわれており、それだけの巨額な金額が動く背景には、さまざまな人物や出来事が存在する。ただ興行を取り仕切った関係者等からは、こういった声も漏れ伝わってきているという。
「メイウェザーは契約を何度も変更してきたので、実現させるまでさまざまなことがあり、結局、今回の興行は赤字になってしまった。ただ、うまくやれば大儲けできるチャンスもある。それだけに、パッキャオとの再戦も、現段階において、すでに合意に至っている」(事情通)
この事情通の話によれば、“世紀の再戦”はアジアで行われることが内定しており、その一戦を手掛けているのも、今回の興行を取り仕切った人物たちだというのである。果たして世紀の一戦の再戦は実現するのか。その裏で何が起こるのか。注目が集まっている。
(文=沖田臥竜/作家)