政府は外国人の雇用拡大に向けて動きだしました。昨年秋からの臨時国会で改正出入国管理法が成立し、日本語教育や生活支援の総合対策を策定したほか、法務省入国管理局を外局となる庁へ格上げし、体制を整えました。政策を総動員して今年4月からの本格受け入れを目指しており、外国人労働者の受け入れ政策は、まさに大きな転換点を迎えたわけです。
しかし、私はこうした政策に大きな疑問を持っています。自動化システム(RPA)や人工知能(AI)が日本全体で本格導入されれば、雇用の余剰が生まれると考えているからです。
政府は人手不足という目先の状況に目を奪われてしまったようですが、RPAはともかく、AIの普及に対して疑問を持っておられる方もいると思います。仮にAIの導入がうまくいかなければ、現状の人手不足が解消できなくなると考えている方もいるでしょう。私自身も、AI導入がうまくいかないという可能性を否定するつもりはありません。
仮に企業のAI導入が失敗したら、国際競争で敗退する可能性が高くなるのではないかと思っています。そうなると、今度は国際競争に負けて人手がいらなくなります。つまり、AIが普及しようがしまいが、結果的に人手不足は解消され、逆に失業者が増えていく可能性が高いわけです。
リクルートワークス研究所は、2025年ごろまでに失業率が5%台ぐらいまでに拡大すると試算しています。先般、同所の大久保幸夫所長にこの話を聞いたのですが、彼らもAIによる人手不足解消とともにAIによる国際競争力低下の可能性を考えているようです。
いずれにせよ、近い将来、労働力が過剰となる可能性が高いわけです。そんななかで、日本の企業は単純労働でも外国人労働者を活用できる体制を整えたわけです。
前述したように、数年後には人手不足が緩和され、失業率が高まるでしょう。それでも「しばらくは人手不足が続くから」と、目先の数年のために安い労働力を確保する目的で外国人労働者の採用枠を拡大すれば、どうなるでしょうか。将来、本当に優秀な外国人労働者がほしいときに、マイナスに働くと思います。そして、優秀な外国人労働者は「日本に行くぐらいなら中国に行くよ」となってしまうでしょう。中国も今後は人手不足になっていくわけですから。