日本の「ごみ処理」が“売られて”いる…“長期包括契約”による民営化がはらむ危険性
長期包括契約の履歴
本稿で今回取り上げる日本のごみ処理が「売られる」という問題は、市町村が持つごみ処理の権限が、民営化によって民間事業者に委ねられていくことが発端となっている。自治体が持つ自治権のなかでも、一般ごみの処理は極めて重要な位置を占める。本連載の前シリーズ「日本の『ごみ処理』が売られるⅠ」でも説明したが、私たちの生活のなかでごみは必ず排出され、処理が滞れば生活に支障をきたすほか、災害や環境にまつわる問題への対処などもあり、民営化は一筋縄ではいかない。
では、自治体がなぜ自治権を民間企業に切り売りしたり、譲り渡すようなことが行われるのか。
まず、長期包括運営委託契約(以下、長期包括契約)の出生の由来を振り返ってみる。民営化の動きは1999年、PFI推進法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行されたときから本格的に始まる。同法では、廃棄物の処理施設もPFIの対象事業として挙げられていた(※3)。
民営化はPFI法以前にも、公設公営の下での民間委託に始まり、PFIのような公設民営化、そして民設民営化(自治体は敷地を提供)が行われてきた。そしてPFIの事例として、期間を限定する長期包括契約が官主導で行われてきた。その背景には、「地方自治体の財政難による施設整備の先送りと、維持管理費の確保の困難性」(※4)があると指摘されている。つまり民営化は、自治体の財政難が引き金となって行われてきたといえる。
しかし、民間事業者は利益が出なければ公共施設の運営に参入しない。市町村が処理責任を負う一般ごみは、景気や資源リサイクルによって増減し、近年は減る傾向である。さらにごみ処理方式は、焼却処理方式で見ると過去数十年間変わっておらず、劇的な技術革新はない。したがって、民営化によって財政難を解決するというのは、矛盾のある選択といってよい。これまでのごみ焼却方式を問い直すことなく、生ごみなども焼却することを前提とした方式では、民営化によってコストが下がるというのは幻想でしかないことがわかる。
民営化にあたり必要不可欠な技術革新
これまでは、ごみを燃やして焼却灰にすることによって約10分の1に減容化し、残った焼却灰を埋め立て処分するという方法が数十年の長きにわたって各地で行われてきたが、それ以外の方法はあるのだろうか。