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日本の「ごみ処理」が売られるⅡ その1 技術革新を欠きメリットに疑問符

日本の「ごみ処理」が“売られて”いる…“長期包括契約”による民営化がはらむ危険性

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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 焼却されている可燃ごみは、生ごみ、プラスティックごみ、紙ごみの3種類に代表的に大別される。そのなかでも約半分を占めるのは、生ごみである。その生ごみは約90%が水分で、全国の清掃工場ではこれを焼却している。しかし、水は常温常圧では100度で蒸発し気化する。つまり膨大なエネルギーをかけて水を燃やすということが毎日、全国の清掃工場で行われている。

 その生ごみを燃やすエネルギーを確保するために、紙ごみは資源化せずに焼却し、補助燃料にもお金を使い、場所によっては補助燃料代わりにプラスティックを燃やしている。もともと、ごみの清掃工場の焼却炉で高温に焼却するのはダイオキシン対策のためであった。プラスティックを燃やせばダイオキシン等の有害物が排出するため850度以上で高温焼却するということであった。ところが、生ごみ焼却のエネルギー確保のためにプラスティックを燃やすという支離滅裂なことが行われている。

 生ごみリサイクル全国ネットワークの福渡和子氏は、『生ごみは可燃ごみか』(幻冬舎ルネッサンス新書)で、生ごみは可燃ごみとして焼却してよいのかという疑問を投げかけている。生ごみを燃やす日本の焼却方式の見直し、技術革新をこそ優先させる必要がある。その際、民間の技術が必要になるであろう。

生ごみの資源化処理や消滅処理の技術革新

 この生ごみの焼却処理では、新たな技術革新によって資源化したり消滅させることで、可燃ごみから除外する方式が実用化されつつある。ごみに付着している微生物を使う方式では、従来の堆肥化等で使う嫌気発酵ではなく、好気発酵によって炭酸ガスと水蒸気に変えて消滅させる方式の実証実験が久喜・宮代衛生組合(埼玉県)で行われ、確立されつつある。

日本の「ごみ処理」が“売られて”いる…“長期包括契約”による民営化がはらむ危険性の画像2写真2 豊橋市のメタン発電施設 貯蔵タンク(18年8月17日 著者撮影)

 また同方式の応用編としては、例えば生ごみをディスポーザーで粉砕して下水に流し、粉砕後に残る固形分を好気発酵処理する方式は、埼玉県秩父市や愛知県豊川市の給食センターで実施され、注目されている。こうした方法を用いれば、生ごみを焼却する必要はなくなり、これだけでも可燃ごみの量は半減する。

 このほかにも、下水処理場から発生する下水汚泥や浄化槽汚泥に生ごみを混ぜてメタン発酵させ、収集したメタンによって発電を行うという愛知県豊橋市での処理も、一昨年10月から稼働を開始し、注目されている。

 こうした技術革新を内包した新しい処理を行うということであれば、民間企業にとっても参入の動機となり、その活用は生きてくるといえる。実施する市町村における基本計画づくり(※5)が必要であるが、住民の了解と参加も得やすいだろう。いずれにせよ、民営化や長期包括契約より、こうした技術革新を進めることが重要である(現在進行中の技術革新については別途報告したい)。

 ごみ処理における技術革新は、分別・資源化によってできるだけ処理量を削減してコストを下げるというのがベースにある。この技術革新を抜きにして、本来行政が行わなければならない仕事を、民営化による丸投げでコストを削減できるというのは本末転倒である。利益を出さなければならない民間企業が、財政難にあえぐ自治体とマッチすることは不可能に近い。

民営化の右往左往

 PFI推進法が施行直後の2003年、一般廃棄物の清掃事業としては、千葉県でかずさクリーンシステム株式会社が4市(木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市)の可燃ごみ処理を担う第3セクターとして建設された。4市の可燃ごみの処理は事業会社に移り、委託費の支払いだけとなった。しかし、PFI事業は自治体による支払額に対してその効果を最大化するVFM(Value for money)(※6)の算定が求められるなどハードルが高く、公設民営というかたちで期間を限定する長期包括契約が民営化では主流となる。

 このように技術革新が欠如したPFI方式は、自治体の資金を頼り、行政にもたれかかるかたちになるため、本来の民営化とはほど遠い内容である。堤さんが指摘しているように、海外で先行する民営化では失敗する事例や委託を受けた事業者の撤退も相次いでいる。

 このように自治体における事業を民営化する際には、ごみの処理を含め、何もかも民営化すればうまくゆく、これまでの事業の質を維持したうえで安くなるというものではなく、場合によっては安くなるということが保障されない事例もあることがわかる。

 では、民営化における長期包括契約とは、どのようなものなのか。具体的にどのような問題が表れてきたか。

 たとえば、建設した焼却炉を焼却炉メーカーの関連子会社が運転・管理する形式を導入した柳泉園組合は、大規模改修工事の契約を長期包括契約のなかに紛れ込ませていた。これは異例であり、本来、建設業法では工事契約は請負契約にしなければならない。それを委託契約に入れてしまえば、委託する事業者に丸投げする違法な契約になってしまう。

 では、この柳泉園組合の契約では具体的にどのような問題があったのか、長期包括契約の実態を見ながら整理したい。次回は、財政難を解決するどころか、官民癒着を生んでいた実態を紹介したい。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

※次回へ続く

【注釈】
※1:『日本が売られる』P.121~122
※2:たとえば自動車業界では、電気自動車への転換が深刻な問題となっている。日米間では関税に守られ優位な位置にあった米国自動車業界が日本の自動車に席巻され、技術力の面でも差がついた。電気自動車に今後切り替わっていくなかで、優位を決定づける新たな技術革新を抜きにして、市場問題だけで戦略を立てるのは、20世紀後半の米国自動車業界の失敗を繰り返すことになる。
※3:PFI法は1980年代後半、イギリスのサッチャー政権時に始められた。
※4:「廃棄物処理施設における維持管理の現状と課題」(廃棄物学会誌VOL19.NO2より)
※5:「一般廃棄物処理基本計画策定指針(環境省)」
※6:VFM(Value for maney/バリュー・フォー・マネー) 支払い(Money)に対して、最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のことで、従来の方式に比べてPFIのほうが総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合。実態は、そのような数字を出せないで終わっている。

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