(2)「送電網に侵入」の誤報
これもワシントン・ポストの報道。16年12月30日の記事で、米北東部バーモント州の電力会社を通じ、ロシアのハッカーが米国の送電網に侵入したと伝え、大きな反響を呼んだ。
しかしワシントン・ポストはその後、注記で記事の内容を徐々に修正。不正プログラムが見つかったのはパソコン内で、送電網にはつながっていなかった。最後には不正プログラムがロシアにも米送電網にも無関係だったとして、記事全体が誤りだったと認めた。
(3)記事を撤回、3人が辞職
17年6月22日、米CNNテレビは、トランプ米大統領の上級顧問アンソニー・スカラムーチ氏がロシア人投資家との関係について連邦議会の調査を受けていると同社ウェブサイトで報じた。
しかし、これは事実ではなかった。CNNは社内調査の末、記事を24日に撤回し、スカラムーチ氏に謝罪。記事を担当した記者と編集者の計3人が辞職した。CNNは、記事が「CNNの編集基準を満たさなかった」と撤回理由を説明。報道機関では原則、ニュースを報じるには少なくとも2つの情報源による裏付けを必要とするが、撤回した記事は単独の匿名消息筋を情報源に書かれたものだった。
(4)音響攻撃でなくコオロギ?
17年9月11日、米NBCテレビは、キューバの首都ハバナにある米大使館の米国人職員が脳損傷を受けたとされる問題で、人間の耳には聞こえないが身体に悪影響を及ぼす、高度な音響兵器による攻撃が原因とみられると伝えた。米当局はキューバではなくロシアなど第三国が実行したとの見方を強めているという。
しかし事実は違ったようだ。神経学者のチームが調べたところ、職員らは脳損傷を受けていなかった。さらに2人の生物学者の調査により、音響兵器ではなく、発情期を迎えたオスのコオロギの鳴き声と酷似していることが明らかになった。
(5)偽ニュースで株価急落
17年12月1日朝、米ABCテレビは、マイケル・フリン前国家安全保障担当補佐官に近い匿名の人物の話として、トランプ氏が大統領候補だったときに、フリン氏にロシアとの接触を命じたと報じた。ニュースは株式市場に衝撃を与え、ダウ工業株30種平均は報道直後の約30分で350ドルも下落した。
トランプ氏のフリン氏に対する指示が大統領選中であれば、民間人だったトランプ陣営が外交を行っていたとして、罪に問われる可能性があった。ところが実際には、指示は選挙に勝利した後だったと判明。違法でもなんでもない。ABCは12月3日、報道に「深刻な誤り」があったとして謝罪し、ニュースを伝えたブライアン・ロス記者は停職となった。