厚生労働省による「毎月勤労統計」の調査過程で不正があったことが大きな波紋を呼んでいる。
「毎月勤労統計」では本来、従業員数500人以上の事業所は、すべて調査することになっているにもかかわらず、東京都については、2004年から当該事業所の3分の1の事業所のみ抽出して調査していたことが判明。その際、残り3分の2の大規模事業所が存在しないかのような不正な処理をしていたため、その分、賃金が低くなってしまった。
その結果、「毎月勤労統計」の平均給与額を変動の基礎として、給付額や給付率を決めている労災保険や雇用保険の支給額が、本来支給されるべき額よりも少なくなっていた可能性があるとして、厚労省は今後すみやかに対象者に不足額を追加給付する方針を示している。
真相解明は、第三者機関による詳細な調査を待つしかないが、不正が行われた背景には、当時、雇用保険財政が極度に逼迫した状況があったのではないかとの指摘がある。その点について、過去の雇用保険の改定データからみていきたい。
下のグラフは、01年以降の1日当たりの失業手当(基本手当と呼ぶ)下限額の推移をグラフにしたもの。失業手当には、年齢や退職理由に関係なく「最低でもこれだけは給付する」という「下限額」が定められていて、この額は毎年「毎月勤労統計」を基にした勤労者の平均給与の変動によって定められている。
03年までグラフの線が2本に分かれているのは、週30時間以上勤務の一般被保険者と、週20時間以上30時間未満の短時間労働被保険者とでは、この「下限額」が違っていたためだ。03年にそれが短時間労働被保険者の額に統一されている。
フルタイムで働いていた労働者は、02年までは、どんなに給与が安い人でも、失業したら日額3400円程度は保証されていたのが、突然半額の1700円まで減らされたのだ。
下限額のその後の推移も興味深い。04年以降は、毎年数円から数十円ずつダウンしている。アップしているのは、06年のプラス8円、11年のプラス264円、17年のプラス144円、18年のプラス8円の4回。
特に11年と17年の下限額大幅引き上げは、いずれも行き過ぎた引き下げの修正だった。すなわち、何年も続けて下げた結果、ついに失業手当の下限額が、最低賃金を下回るという現象が起き、その非常事態を緊急的に解消するための引き上げだった。