今回、インターネット上に表示されたポップアップを『消す』指示をしても、『消えない』動作となるのであれば、この犯罪の構成要件に該当するのでしょう。世間では、『実害がないから、補導や捜索差押はやり過ぎ』という意見があるようですが、この犯罪は『危険犯』という種類の犯罪であり、現実に実害などが発生していなくても、『正常なインターネット環境』といった法律が守るべき利益(法益)が侵害されるおそれがあれば、成立するのです。したがって、実際に逮捕したり罰したりするかどうかは別として、今回の件も犯罪の構成要件に該当する可能性は高いと考えることができます。
もっとも、刑法という法律が、社会のルールを逸脱した行為・者に対する最終手段として位置づけられている法律なので、今回の補導などは、“使い方”を間違っているような気がしますね」(山岸弁護士)
ITジャーナリストの見解
他方、ITジャーナリストの三上洋氏は、「不正指令電磁的記録供用未遂による補導・家宅捜索は不当で間違っている」と語る。
「まず、URLにより誘導されたサイトは、レンタルブログ・FC2につくられたページで、JavaScript(ウェブサイト上で一般に使われているスクリプト=実行文)で動いており、ポップアップの小窓を繰り返し表示するだけです。それ以外の悪さ、攻撃は一切行っていないと思われます。つまり、パソコンやスマホへの実害はないと考えられます。『閉じることができない』との警察発表だが、最新版のブラウザで試したところ、閉じることが可能。そのほかにも、閉じ方を解説するサイトは数多くあります。
また、不正指令電磁的記録に関する罪は、いわゆるウイルス供用罪です。しかし、このサイトはウイルスではないし、害も与えません。無害なイタズラにすぎず、たとえれば“公園の砂場で遊んでいて砂の山を崩したら、警察に補導された”ぐらいやりすぎで、不当な補導・書類送検と考えます。しかも、報道によれば『未遂』です。ウイルス供用ではないのに未遂とするのはおかしいです」(三上氏)
さらに、このサイトを違法とするのであれば、さまざまなウェブサイトの広告が違法になってしまうと警鐘を鳴らす。
「今回はリンクの書き込みのみです。これがダメなら、一般のウェブサイトの動画広告やスクロール広告もすべて犯罪になります。
不正指令電磁的記録に関する罪とは、『意図に沿うべき動作をさせない、意図に反する動作をさせる』プログラムを取り締まり罰するもので、『意図に沿うべき動作をさせない』という意味では、確かに今回のサイトも当てはまるが、これを犯罪にするのなら、動画広告を出すサイト、繰り返し広告を出すサイトすべてが対象になってしまうでしょう。