たとえば、ある新聞社サイトで、記事を読もうとしたところ、不要な動画広告を見せられ、データ通信料金がかかってしまったという状況は、『意図に沿うべき動作をさせない』といえます。また、あるスマホサイトで、広告がスクロールして常に表示されて消せない、半透明の広告でユーザーにむりやりクリックさせようとするのも、『意図に反する動作』です。
こんな小さないたずらサイトよりも、もっと悪質な詐欺サイトを取り締まるべきです。たとえば、『なかなか閉じることができず、大きな音が鳴る詐欺サイト(サポート詐欺)』『<ウイルスに感染しています>と偽の脅しを出す広告・サイト』『<システムが遅くなっています>などの偽の表示を出す広告』などのほうが悪質で実害があります」(同)
では、なぜ警察は補導・書類送検したと考えられるのか。
「考えられるのは、『担当者のIT・インターネットの知識が浅い』『未成年のサイバー犯罪へのみせしめ的な補導・報道発表』『サイバー犯罪の検挙率を高めたい』という3点です。2020年の東京オリンピックに向けて、セキュリティ強化は国家的課題となっています。そのため、サイバー犯罪の検挙数を増やすことがノルマになっている可能性があります。偏った見方かもしれませんが“検挙しやすい相手”や“国内で簡単に捜査できる対象”を選んだ可能性もあります」(同)
今回の兵庫県警の対応について、問題点はどこにあるのだろうか。
「都道府県警察単位のサイバー犯罪対策は無理があると思います。今回の件のみならず、昨年話題になった神奈川県警などが立件したCoinhive事件なども同様です。いずれもITやネットの一般的な利用・常識からかけ離れた立件といえます。ITへの理解が深い警察は、このような事案について立件していません。一般的なネットへの理解があれば今回のような立件はしないでしょう。また、ネット犯罪は都道府県の枠とまったく関係ありません。都道府県単位で捜査するには、知識・経験のある捜査員が足りないのが現状です。したがって、ネット犯罪は、都道府県単位ではなく警察庁がまとめて全国を見るべきではないでしょうか」(同)
海外のニュースでも「兵庫県警はITについて無知すぎる」と批判されるなど、注目度は増している。ITが進歩するほど、犯罪も巧妙化・高度化する。取り締まる警察も、高度な知識が求められることになる。
(文=編集部)