山口組の組長といえば、山口組のトップを意味するだけでなく、構成員数や資金力といった組織力からしても斯界のリーダー的存在と位置づけられるだろう。それだけに発言の一つひとつには重いものがあり、ヤクザ業界のみならず、社会に影響を与える力を持っていることになる。
その立場にある六代目山口組・司忍組長が、平成最後の発行となる山口組機関紙「山口組新報 第18号」の巻頭を飾ったのだ。そこに寄せられた文章の中で注目すべきは、文末に記された、六代目山口組分裂騒動について言及していることだろう。
「~平成の回顧、新時代に向けての期待~」と題されて始まった文章には、平成という時代を振り返りながら、ヤクザ組織に対する当局からの類を見ない弾圧を悪政として辛辣に指摘し、その上で分裂騒動については、「終幕に向かっており、分裂劇すらも小事である」という旨を述べている。
「司組長の言葉には重みがあり、その司組長自らが分裂騒動にいつまでも足を取られている暇はないという趣旨の発言を述べられている。山口組組員にとって司組長の言葉は絶対であり、司親分がそのように言い切っているのだ。当局の締め付けや分裂騒動に対して不安を募らせる配下の組員らにとって、これほど士気が上がる言葉はないのではないか」(六代目山口組関係者)
事実、分裂騒動も4年目に入り、六代目山口組・髙山清司若頭の社会復帰が近づくにつれ、業界内では「やはり本家が強かった」といった声が日増しに強くなってきているのは確かではないだろうか。そんな中、司組長が直々に「終幕に向かっている」という言葉を発することで、より一層、流れが六代目山口組に傾いてきていることを内外に知らしめることになりそうだ。
「山口組新報」2ページ目から6ページまでは、六代目山口組の行事が記されており、7ページでは組員らによる恒例の短歌や川柳が投稿されている。余情を詠んだ句も多く記載されているが、その中でもユーモアに富んだ川柳をいくつか抜粋したい。
親分の 背中を追いかけ 息切れ中
じいさんは ライン見たかと 電話くる
頑張れよ 無理をするなよ 休むなよ
携帯を 持った時から 自由なし
各組織の組員から出された短歌や川柳がすべて掲載されるわけではない。毎号、時代に沿った秀逸な句が採用されるのだ。
「こんなご時世だ。美辞麗句を並べてみても仕方ない。発行に携わる幹部の人たちの寛容さがあってこそ、新報を読む組員の共感を得ることにつながり、それが結果とし組織の結束につながっていくのではないか」(六代目山口組系幹部)
最終ページには旅行記が綴られており、平成最後の「山口組新報」は締めくくられている。筆者が現役時代に復刊した山口組新報も、今回で18号となった。平成から元号が変わっても、六代目山口組を知る上で一級品の資料となっていくのではないだろうか。
(文=沖田臥竜/作家)