アマゾン、出品企業に値下げ強制の実態…GAFA、巨額利益あげる日本で見合う税金納めず
いうまでもなく、タックスヘイブンを使った節税対策はお手の物。しかも、「GAFAがどのような方法で利益を生み出しているのか」、そのメカニズムも不透明である。利用者の同意を得たわけでもなく、一方的に集めた購買履歴や検索履歴をもとに個人向けの「ターゲット広告」を打ち、企業から広告収入を得ているようだが、その実態は闇の中。
ほかにも、金融当局の関心を集めているのは、GAFAが進めるプラットフォームを利用した顧客の特性に合わせた金融商品やサービスの提供である。すでに既存の金融機関はクラウドサービスの活用を拡大しており、基幹業務はもとより金融商品の販売にもGAFAに依存する度合いが増してきた。銀行や証券会社がGAFAに飲み込まれる日も近いかもしれない。アップルの場合は、2019年からクレジットカードのサービスを始めた。しかも、「年会費なし」だ。物流でも金融決済でも地殻変動が起きている。
「デジタル課税」
こうした指摘を受け、日本政府は本年6月末に大阪で開催されるG20首脳会議を機会に、世界的な巨大IT企業に対する「デジタル課税」に関する国際的なルールづくりを主導する考えである。今回の自民党によるヒアリングはそれに向けての提言をまとめるためのもの。具体的には、「巨大IT企業の監視機関の創設」「中小企業に対する不公正取引の防止策」「不当な個人データ収集の適正化」が提言の柱になる見込みだ。
日本政府は経済産業省、公正取引委員会、総務省が合同で「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を発足させており、本年6月までにGAFAの規制策を取りまとめ、わが国の成長戦略に盛り込む方針を固めている。公正取引委員会では年初から「デジタル・プラットフォーマーの実態に関する調査」を始めており、中小企業からの情報提供を求めている最中である。
要は、GAFAのような巨大企業がデータを独占し、中小企業を圧迫し、公正な競争環境を阻害している、との危機感が沸き上がっているわけだ。このままでは、ネット上の競争において、日本企業はプラットフォームを海外に握られ、すべてのビジネスがGAFA経由でなければ成り立たなくなりかねない。実に由々しい事態といえよう。
と同時に、GAFAが巨大な資金力を背景に有望な新興企業を相次いで買収し、傘下に収めていることも無視できない。たとえば、グーグルはユーチューブを、フェイスブックはインスタグラムを買収。ライバル企業を買収することで本来あるべき競争を回避し、寡占化を加速させているわけで、消費者の選択の幅を狭めていることは間違いないだろう。
とはいえ、自民党の要請に応じてヒアリングに臨んだGAFA各社の担当者は一様に疑念や批判を否定し、「意図的に独占的な対応をしているわけではない。競争相手は多い。透明性と公正性に配慮し、企業努力を続けている」と自己弁護を繰り返した模様だ。
しかし、こうした巨大企業が圧倒的に有利な立場を利用し、取引企業に対して不公正な契約を強要していることの裏付けは、枚挙にいとまがない。日本政府は独占禁止法の「優越的地位の乱用」条項を適用することで規制を図ろうとしている。加えて、独禁法を補完する方向で、「重要な取引条件には開示を義務付ける」ことや、「違反した場合の課徴金の引き上げ」も検討中である。
日本企業はリアルデータで勝負せよ
では日本企業がGAFAとの勝負に勝つにはどうすればよいのか。日本政府が公正な競争環境を整えるのは当然のこと。とはいえ、政府が日本企業を保護するがゆえに、外国の企業を独禁法で排除するようなことになってはまずいだろう。肝心なことは日本企業の国際競争力を高めることである。
幸い、日本は世界規模で展開中の「第4次産業革命」のうねりのなかで独自の路線を追求できる立場にある。即ち、GAFAが得意とする「バーチャルデータ」の分野と対極にある「リアルデータ」の収集と蓄積で勝負をかけることが、日本のIT企業の生き残りを決することになる可能性が高いと思われる。
具体的には個人データではなく、産業データの活用を図る道である。GAFAが手をつけていない分野で日本が先行しているのは「個人の健康・医療・介護データ」や「製造工場の稼働データ」など、個人のネット売買とは異なるリアルデータである。こうした分野では日本の優位性は抜群といえよう。日本の基幹産業を形成する「自動車等の製造業」や「ヘルスケア」の分野では日本企業の持つデータはGAFAをはるかに凌駕しているからだ。日本発のプラットフォームを形成するには昨年閣議決定された「未来投資戦略」にも合致するリアルデータでの勝負に賭けるべきである。
しかし、残された時間は少ない。なぜなら、ヘルスケアのリアルデータを取得し、新たなビジネスの中心に据えようとする動きをアマゾンが始めたからだ。彼らの動きは速い。シアトルの病院と提携し、患者のデータを収集、分析し、自動診断や個別治療薬の開発に着手したという。
と同時に、注目すべきはグーグルの動きだ。一度は撤退した中国市場への再参入に舵を切ったといわれる。グーグルが狙うのは14億人という中国人のビッグデータにほかならない。中国にはGAFAと肩を並べるBATが存在する。バイドゥー、アリババ、テンセントの3社で、中国版プラットフォーマーだ。日本がまごまごしていれば、米中のプラットフォーマーによる覇権争い、あるいは合従連衡が進み、日本は瞬く間に飲み込まれてしまうことにもなりかねない。
グーグルの創業社長で今やグーグルの持ち株会社アルファベットの取締役を務めたエリック・シュミット氏の言葉が重く響く。
「AIに関していえば、2019年の時点では、アメリカはまだ優位といえるだろう。しかし、『中国製造2025』が実現する頃には、たぶん米中は肩を並べている。いや、ひょっとすると、中国に先を越されているかもしれない」
トランプ大統領もペンス副大統領も事あるごとに、中国脅威論を振りかざしている。しかし、政府の規制がどこまで功を奏するのだろうか。GAFAもBATも国家の枠を超越した存在となりつつある。彼らが手を組むことになれば、アメリカ政府も中国政府も手を出せない。そんな超国家企業の時代が迫っている。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)