日産自動車と仏ルノー、三菱自動車が、3社連合の意思決定機関である「アライアンスオペレーティングボード」を設立すると発表した。カルロス・ゴーン元会長に権限が集中する以前の体制に戻したわけだが、肝心の資本構成については何も決まっていない。
自動車業界は100年に一度という変革期を迎えており、上位4社への寡占が急ピッチで進んでいる。市場は、ルノーと日産の経営統合が進むことを前提に動いてきたが、このまま現状維持が続くのだとすると話は変わってくる。ルノーと日産が単体のままではただの中堅企業にすぎず、トヨタ自動車や米GM(ゼネラル・モーターズ)と戦う力はない。3社連合に残された時間は少ない。
ゴーン体制以前に戻したというのが実態
仏ルノーと日産、そして三菱自動車の3社は2019年3月12日、3社連合の新しい意思決定機関である「アライアンスオペレーティングボード」(以下、アライアンスボード)を設立すると発表した。アライアンスボードは、3社のオペレーションやガバナンスを監督する唯一の機関として位置付けられており、ルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)、日産の西川廣人社長兼CEO、三菱自の益子修会長兼CEOの4名で構成される。会合は毎月、パリもしくは東京で行われ、会合の議長はスナール会長が務めるという。
カルロス・ゴーン元会長が逮捕される以前は、ゴーン氏が強いリーダーシップを発揮しており、3社連合の意思決定は実質的にゴーン氏に委ねられていた。新しく設立される組織は基本的に合議制ということになるので、ゴーン氏が全権を握る以前の体制に戻ったことになる。
しかしながら、この新組織が3社連合の司令塔として迅速な意思決定を実現できるのかというと、そうはいかなそうである。その理由は、この組織の存在そのものが玉虫色だからである。
ボードの構成メンバーはルノーから2名、日産から1名、三菱から1名となっている。三菱は3社のなかでは突出して規模が小さいので実質的な発言権はないと思われるが、状況から判断して日産の決定に追随する可能性は高い。そうなると会議のメンバー構成的にはフランス側2名、日本側2名という形になり、日本側とフランス側で意見が割れるケースが多くなるだろう。
この時、資本構成を優先するならば、すべてはルノー主導ということになり、日産がゴーン氏を排除してまで獲得したかったルノーからの離脱を実現できなくなる。ルノー側も日産のこうした事情にある程度、配慮したからこそ、フランス側2名、日本側2名で議長はフランス側が務めるという微妙な合議制を認めた可能性が高い。