4月1日に発表された、新時代の幕開けを告げる元号「令和」。菅義偉官房長官が掲げた2文字に「美しい響き」「日本古来の言葉で素晴らしい」と賛辞が贈られる一方で、政界や識者からは否定的な声も上がっている。
4月30日に控える天皇陛下の退位に伴い、昨年から大きな注目を浴びていた新元号。多くのメディアやインターネット上で予想合戦が繰り広げられてきたが、結果はこれまでの中国古典由来ではなく、『万葉集』の序文を典拠とするものとなった。日本の古典を由来とする例は初とされ、元号に「令」の字が使われるのも今回が初めてのことだ。
1日に談話を発表した安倍晋三首相は、「令和」について「万葉集にある『初春の令月にして 気淑く風和ぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす』との文言から引用」と解説し、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められております」と明かした。
安倍首相の思いとは裏腹に、身内である自民党から批判的な声を上げたのが元幹事長の石破茂議員だ。記者団の電話取材に対して、石破氏は「違和感がある。『令』の字の意味について国民が納得してもらえるよう説明する努力をしなければならない」と答えたことが報じられている。また、社民党の又市征治党首からも「命令の『令』であり、安倍政権の目指す国民への規律や統制の強化がにじみ出ている感が否めない」との見解が飛び出している。
又市党首と同じ捉え方をしているのが、放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏だ。朝日新聞デジタル4月1日付記事で、デーブ氏は「いずれなじむだろうけど、響きはよくない。令は命令の令だし、『冷』の字を想像させ、冷たい雰囲気がまずある」「『平和に従え』みたいに読める。上から目線が、安倍政権っぽい感じ」と持論を述べている。
また、漫画家の小林よしのり氏はニュースサイト「BLOGOS」にて、「『令』は王冠の下に人が跪いている図だから、やっぱり君主か支配者の命令の意味である」「『令和』を見て、なんとなく冷たい感じがするのはやむを得ない」と語っている。
実際、その意味から「令」が見送られたケースもあるようだ。元号に詳しい京都産業大学の所功名誉教授によると、1864年に「元治」に改元された際に「令徳」の候補があったが、幕府側が「徳川に命令する」という意味があるとして難色を示し、採用に至らなかったという(日本経済新聞4月2日付記事より)。
ネット上でもさまざまな意見が飛び交い、否定派からは「解説を聞かなかったら、確かに令の字は冷たい印象がある」「なんかキラキラネームみたいでイマドキって感じるのは私だけ?」「上から目線で冷徹な感じで史上最悪の元号」といった声が上がっている。また、石破議員のコメントについては「石破さんの発言のほうに違和感を覚える」「単に安倍批判をしたいだけでは」といった意見も見られるなど、議論を呼んでいる。
一方、海外ではどう受け止められているのか。欧米メディアは“日本の右傾化”を指摘する論調が多いことが報じられており、韓国の朝鮮日報は日本古典からの引用について「安倍政権は支持基盤である保守派を意識した」と分析している。
ネガティブなイメージが先行しないよう、安倍政権には新元号の意味に見合った舵取りが求められそうだ。
(文=編集部)