さきほど、天皇陛下は最後の儀式である「退位礼正殿の儀」にのぞまれ、本日をもって天皇を退位され、平成という時代が終わりを告げる。
天皇は「退位礼正殿の儀」のなかで「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」と述べられ、国民へ感謝の意をお伝えになられたが、明日5月1日には現皇太子さまが新天皇に即位され、「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」「即位後朝見の儀」が行われ、正式に即位されたことを初めて国民にお示しになられる。
天皇の退位に際し、麗澤大学教授で皇室制度に詳しい八木秀次氏に、天皇が追求された「象徴」の意義について解説してもらう。
象徴の積極的意義
天皇陛下が本日をもって退位された。本日夕方の退位の礼でご在位の30年間を振り返えられ、「即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」と述べられた。
憲法は天皇の地位を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて」(第1条前段)と規定している。「象徴」という文言自体には特に意味はなく、第4条1項の「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と相まって、政治に関与しないがゆえに対立する国民を高次元で統合する役割を求められているというのが第1条前段の意味だ。政治に関与してはいけないという消極的意義だ。
陛下が今日も言及されている「象徴」とは、そのような意味を超えた天皇としてのあるべき姿だ。象徴の積極的意義といってよいだろうか。
陛下のおっしゃる「象徴」とは何か。平成28年8月8日のお言葉で「天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」と述べられたが、ここでいう「事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」こそが、陛下の追求された「象徴」としての天皇の姿であろう。