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30年前の昭和天皇崩御と“平成への代替わり”…長く異常な5カ月間、日本全体が混乱

文=編集部
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30年前の昭和天皇崩御と“平成への代替わり”…長く異常な5カ月間、日本全体が混乱の画像1昭和天皇崩御(写真:Fujifotos/アフロ)/span>

 明治時代以降の近代日本ではいわば封印されてきた天皇の生前退位という大きな歴史の節目を、私たち国民は迎えた。

 昨日には「退位礼正殿の儀」が執り行われ、現上皇が天皇を退位され、令和の時代が幕開けとなった本日、多くの国民が見守るなか、新天皇陛下が即位の儀式である「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」「即位後朝見の儀」にのぞまれる。

 代替わりという重大な国家的行事を迎え日本全体が厳かな空気に包まれるなか、約30年前の昭和64年(1989年)、新年を迎えたばかりの1月7日午前6時33分に昭和天皇が崩御され、混乱のなかで平成という時代を迎えた“昭和から平成への代替わり”を思い出した人々も多いのではないか。

 今回の新天皇即位に伴う一連の儀式・行事・祭礼などでは、税金からの支出額を抑えるという観点からも、前回と比べて簡素化が図られているといわれているが、“平成への代替わり”とはどのようなものだったのだろうか。

 そこで今回、2016年8月9日付当サイト記事『天皇陛下、生前退位で国家的大混乱の恐れ…昭和天皇崩御の27年前、長く異常な5カ月間』を改めて再掲する。

---以下、再掲---

 8日、天皇陛下はあくまで「私が個人として、これまでに考えてきたことを話したいと思います」と前置きをなされつつも、以下のように心境を語られ、以前より報じられていた「生前退位」への強いご意向をお示しになられたとも受け取れる発言をなされた。

「従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました」
「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」
「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」

 今回のご表明をめぐっては、すでにさまざまな解釈がなされているが、専門家の間でも高い関心を集めているのが、天皇陛下ご自身の崩御について触れられた次のご発言である。

「天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶことが懸念されます。さらに、これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2カ月にわたって続き、その後喪儀(そうぎ)に関連する行事が、1年間続きます。そのさまざまな行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることはできないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」

 上記のなかで天皇陛下は、「社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶことが懸念されます」とされておられるが、具体的にはどのような状況なのであろうか。

 昭和天皇が崩御された昭和64年(1989年)当時の状況について知る元新聞記者に、解説してもらった。

長い5カ月間

 昭和天皇は崩御前年の昭和63年9月19日に大量吐血なされ、翌昭和64年1月7日に崩御されるまでの約3カ月間、マスコミ各社は特別取材体制を敷いて連日報道合戦が繰り広げられました。この間、宮沢喜一・蔵相が先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議を欠席するなど、政治にも大きな影響を与えました。

 さらに、NHKは24時間報道体制に入り、民放テレビ各局もバラエティ番組の放送を自粛するほか、全国各地で祭などの行事が中止となり、経済的損失が発生する地域や業界も出ました。芸能事務所、吉本興業所属のお笑いタレントが相次ぐ出演キャンセルに見舞われ、同社の業績が下振れするといった事態も起き、ちょっとした話題になることもありました。

 そして昭和64年1月7日午前6時33分に昭和天皇が崩御されると、その約1時間20分後に小渕恵三官房長官(当時)が国民に向けて発表。さらに政府は民間企業と国民に向けて「哀悼の意」を表するよう要望し、証券取引所や大相撲などが中止されました。同日午後には新元号「平成」が発表され、翌8日に施行されました。

 昭和天皇の崩御に関する儀式をめぐっては、「政教分離」の問題が政府の頭を悩ませました。戦後成立した現行の日本国憲法においては政教分離の観点より、皇室の儀式は宗教性・政治性を帯びないものだけが国事行為として認められています。しかし、皇室典範では「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」としか書かれていません。

 昭和天皇の崩御、及び平成天皇の即位はこの現行日本国憲法下で初めての事例となり、同年2月24日に行われた葬儀では、計7つの儀式のうち4つが皇室行事、3つが国の儀式として執り行われました。竹下登首相(当時)ら三権の長は1月10日、中心的な儀式である「葬場殿の儀」に出席しない意向を一旦表明したものの、国内外の世論の動きを受け、そのわずか4日後に一転して出席を表明するなどの混乱もみられました。ちなみに1月7日~16日の皇居における弔問記帳者は233万人にも上りました。

生前退位の社会的影響

 以上は昭和天皇の崩御と平成天皇の即位をめぐる動きのほんの一部分であり、今回天皇陛下が「生前退位」のご意向をお示しになられたのは、まさにご自身が「お気持ち」のなかで述べられた「社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶ」事態を回避なされたいという強い思いの現れだといえます。

 もっとも、現行憲法下における天皇の崩御という事態を、日本の政府と社会は一度経験済みであり、いわば前例があるため、社会的混乱はかなり抑えられる可能性が高いともいえます。一方、「生前退位」は現行の憲法と政治制度の想定外であり、これから法整備も含めて細かい制度設計をゼロから行い、そしてそれを実際に実行する必要があります。その意味では、かなりの大きな影響や国家的な大混乱を社会に及ぼす可能性もあるでしょう。
(文=編集部)

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