消費税10%への増税が目前に迫ってきた。生活に不可欠な食品類などは、現行の税率8%のまま据え置かれる。しかし、同じ食料品でも外食と見なされれば10%の税率が適用される。そのため、コンビニエンスストアやスーパー、ファミリーレストランやファストフード店などが消費税10%に神経をとがらせている。生活必需品としての食料品なのか、贅沢品としての外食なのかの線引きは不可能に近い。
コンビニなどのイートインコーナーをめぐる議論を見ても、それは実感できるだろう。イートインで食べる場合は外食扱いで消費税は10%、買って帰る場合は8%に決められた。しかし、コンビニの店舗外に設置されたベンチで食べる場合はどちらの扱いになるのか。またコンビニ店舗に隣接して公園があり、そこで食べる場合はどうか、といった議論は尽きない。
たとえば、ピザやラーメンの宅配は、自宅や友人宅などで食べることが前提になっているので消費税は8%。しかし、ホテルのケータリングサービスや会場に料理を届ける場合は外食扱いになるため、消費税は10%が適用される。しかし、学校の給食や高齢者施設における食事サービスは、8%据え置きのまま。8%と10%の線引きは、曖昧といわざるを得ず、それが混乱を大きくしている。
こうした8%と10%が混在する状況に頭を痛めているのが、個人経営の商店主たちだ。チェーンを展開する大手企業には経理の専門部署があり、教育を受けたスタッフが会計処理をしてくれるだろう。しかし、身内で切り盛りしているような個人経営店には経理専任スタッフを雇う余裕はない。教育を施す資金的余裕も時間的余裕もなく、消費税率が混在する状況に戦々恐々としている。
そして、その皺寄せは役所にも及ぶ。市町村には地域の商店、商店街・商工会との窓口になる商工課や地域振興課といった部署がある。そうした部署には、多くの相談が寄せられているのだ。ある市の職員は言う。
「消費税が10%に上がることも、個人店にとっては経営を揺るがす一大事です。それ以上に8%と10%が並立することによる混乱のほうが、個人経営店にとっては大きいと実感しています。特に、個人店の多くは高齢者が経営しているケースが多い。そうした高齢経営者は無理に営業を続けるよりも、『遠くない将来に店を閉めるのだったら、これを機に廃業してしまおうか』と考えがちです」