ロシア海軍黒海艦隊の旗艦ミサイル巡洋艦「モスクワ」に関する衝撃的な写真がTwitter上で拡散され、世界中で真偽をめぐり物議を醸している。
写真は英キングス・カレッジ・ロンドンの戦争学部(Department of War Studies)の博士課程の学生、ロブ・リー氏が引用し、「ウクライナ軍によるネプチューン対艦ミサイルの攻撃後のモスクワのように見える」とツイートした。元画像の投稿者は匿名で出所は不明だ。
Looks like a legit photo of the Moskva after it was struck by Ukrainian Neptun anti-ship missiles. https://t.co/oVYDySpcd8
— Rob Lee (@RALee85) April 17, 2022
写真では、黒煙を漂わせ、左舷に少し傾いた軍艦の模様が写されている。この投稿を皮切りに、別のアングルからの写真の投稿もTwitter上で拡散されている。
ロシア国防省「火災後、荒波にもまれて沈没した」
AFP通信は15日(日本時間午前6時4分)、モスクワ発で記事『ロシア黒海旗艦が沈没 ウクライナはミサイル攻撃主張』を配信。ロシア国営通信(TASS)の報道を引用する形で、ロシア国防省が14日夜、ウクライナでの軍事作戦中に損傷した黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ(Moskva)」が沈没したことを伝えた。同記事によると、「国防省によると、同艦は弾薬の爆発と火災に見舞われた後、港へのえい航中に船体の損傷が原因でバランスを崩し、荒波にもまれて沈没した」としている。
ウクライナ軍は国産巡航ミサイル「ネプチューン」で同艦を攻撃したと主張。CNNなどの米報道によると、米国情報当局筋はウクライナ軍のミサイル攻撃が行われた可能性が高いことなどについて言及しているが、同巡洋艦がどのように沈没したのかは真偽不明だ。
荒波で沈没したはずだが……?
護衛艦隊での幕僚経験のある元海上自衛官に一連の投稿を見せたところ、以下のように語った。
「投稿でも指摘されている通り、艦橋・マスト、ヘリコプター格納庫などの形状からモスクワのように見えます。船体の亀裂のようなものも確かに見えます。
しかし、気になることがあります。波の高さと天気です。写真を見る限り、雲はかかっていますが荒天というわけでもなさそうです。モスクワに火災が発生し、沈没した当初、現場海域は荒天で、欧米の報道でも『天候が荒れているため衛星では確認できない』などと報じていました。ロシア国防相も『荒波にもまれて沈没した』と発表していたはずです。
仮にこの写真が本物だとすると、この後、天候が乱れ、波が高くなったということなのでしょうか。それとも荒天ではなかったということなのでしょうか。写真が撮影された後、波が高くなったのかもしれません。海の状況は変化しやすいので、なんとも言えません。この写真に限らずウクライナ戦争では、真偽不明の情報が飛び交っています。ただ、モスクワの沈没はロシアやウクライナはもちろん、西側諸国でも大きな注目を集めています。どのようにこの写真が出てきたのか、また画像の真偽についてはおそらく米英の防衛・情報当局者が注視し、分析しているとは思います」
モスクワがどのように沈んだのか。議論は続いている。
(文=Business Journal編集部)