マンション価格や家賃の上昇が続く東京23区。そのなかで練馬区が「実は“ダサい”というイメージ以外に欠点がない」「ターミナル駅や都心へのアクセスが優れている割に家賃が安い」などと一部ネット上で話題となっている。居住するエリアという観点で見た場合、東京23区のなかで練馬区はお薦めといえるのか。また、練馬区の魅力や住むメリットは何か。専門家の見解を交えて追ってみたい。
東京23区の住宅の上昇が続いている。2023年に販売された新築マンションの一戸あたりの平均価格は1億1483万円と初めて1億円超えとなった(不動産経済研究所の調査より)。中古マンション価格も平均希望売り出し価格が7231万円(70平方メートル当たり/4月/東京カンテイの調査より)となっており、高止まりが続いている。
なかでも東京都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区)は特に高水準の価格だが、同じ東京23区でも練馬区が意外な狙い目だとして一部ネット上で話題となっている。
住宅評論家・櫻井幸雄氏はいう。
「都心からみると埼玉県の方向に位置し、練馬大根が有名ゆえに農地が多いという印象があり、これまで世間的には『ダサい』というイメージが広まっていましたが、以前からプロの間では評価が高いエリアでした。東京で住宅コストがもっとも高く格上とされるのが城南エリア(目黒区・品川区・大田区・港区)、その次が城西エリア(新宿区・世田谷区・中野区・渋谷区・杉並区・練馬区)で、練馬区は城西に属しており、比較的良い場所柄といえます」
練馬区の人気が高まっている理由は大きく2つあるという。
「1つ目は練馬区を走る西武池袋線の人気上昇です。かつては路線が中央線と並行していて、かつオシャレというイメージが持たれていた西武新宿線のほうが人気が高かったですが、現在では逆転しているといわれています。西武池袋線は有楽町線・副都心線・大江戸線に乗り入れており、都心やターミナル駅へのアクセス面で優れています。一方、西武新宿線の始発駅である西武新宿駅はJR・私鉄各線の新宿駅から徒歩で10~15分ほどかかり、ロケーションも歌舞伎町に隣接する場所ということで評価はいまいちです。
2つ目は、西武池袋線の池袋駅周辺を含む豊島区の再開発が進んでいる点です」(櫻井氏)
あまり指摘されない隠れた魅力
家賃という面ではどうか。ちなみに賃貸物件検索サイト「ホームメイト」によれば、東京23区の賃貸物件の家賃相場(1R/1DK)としてもっとも高額なのが千代田区で11.82万円、次いで港区(11.08万円)、目黒区(10.58万円)、新宿区(10.4万円)が続き、練馬区(6.62万円)は16位。下位3区は葛飾区(6.05万円)、江戸川区(6.03万円)、足立区(5.83万円)となっている。
「山手線の内側エリアと比べて安いというのは魅力の一つです。もっとも、山手線の外側で近年人気が上昇している十条(北区)や赤羽(同)などと比べて特段に安いというレベルではなく、横並びくらいといえますが、北区や板橋区などと比べるとアクセス面に優れており、街としての人気も上といえるのではないでしょうか」(櫻井氏)
上記以外にも練馬区には、あまり指摘されない隠れた魅力があるという。
「練馬区には高級住宅地の大泉学園がありますが、田園調布や松濤、神山町などの東京の高級住宅地は大正末期から昭和初期にかけて整備されたところが多いです。これらの街に共通しているのが、当時の風情が残っていて、一方通行の道が多い点です。これは一見すると不便そうですが、信号が少なくて済み、歩行者は走行している車がないのに赤信号で待たなければならないという状況になりにくいというメリットがあります」
(文=Business Journal編集部、協力=櫻井幸雄/住宅評論家)