開業から20年以上が経った都営地下鉄大江戸線の延伸構想が実現間近とされている。全体構想は光が丘駅からJR武蔵野線の東所沢駅までのルートだが、まずは(仮称)大泉学園町駅までの延伸が先行して進められるとみられる。延伸が実現すれば、練馬区には3つの新駅の誕生が予定されており、北西部の「鉄道空白地域」の解消も期待されている。
大江戸線延伸の進捗状況や地域沿線のまちづくりについて、練馬区都市整備部大江戸線延伸推進課の原田昭二課長に話を聞いた。
大江戸線延伸で練馬区が変わる?
――大江戸線延伸構想の概要について、教えてください。
原田昭二氏(以下、原田) 現在、光が丘駅まで整備されている大江戸線が大泉町と大泉学園町を通り、JR武蔵野線の東所沢駅へと延伸するネットワーク構想です。このうち、練馬区内では、(仮称)土支田駅、(仮称)大泉町駅、(仮称)大泉学園町駅の3つの新駅を整備する予定です。
練馬区の北西部には、駅からの距離が1kmを超える鉄道空白地域が存在しています。大江戸線の延伸により、この問題が解消されることになります。延伸が計画されている地域は、樹林地や農地などが残る、みどり豊かで閑静な住宅地となっています。延伸により鉄道の利便性が飛躍的に向上し、将来に向けてさらなる街の発展が期待されます。
――総事業費はどのくらいを想定していますか。
原田 国土交通省の小委員会が策定した「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」によると、総事業費は900億円とされています。また、練馬区では延伸に資するため「大江戸線延伸推進基金」を設け、現在50億円を積み立てています。
――進捗状況はどうなっていますか。
原田 東京都は15年7月に「広域交通ネットワーク計画について」を策定し、個別の路線の整備効果や収支採算性などについて検討しています。その結果、大江戸線の延伸は、整備について優先的に検討すべき5路線の一つに位置付けています。
また、16年4月の国土交通省の交通政策審議会答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」でも、24の鉄道プロジェクトのうち特に進めるべき6つのプロジェクトに入っているなど、高く評価されています。
東京都が21年3月にまとめた「『未来の東京』戦略」においても「調整が整った路線から順次事業に着手」と明記しており、大江戸線は「関係者と事業化について協議・調整を進める」と位置付けています。
大江戸線の延伸について、導入空間となる補助230号線は、笹目通りから土支田通りに加え、土支田通りから別荘橋までの約200m区間も整備が完了し、交通解放されており、用地取得率は8割を超えています。練馬区と事業予定者等との実務的な協議など調整も進めており、事業化に向けた熟度は高いと考えています。
20年10月の小池百合子都知事と前川燿男練馬区長の意見交換会において、区長からの「都営地下鉄大江戸線延伸の早期着工」の要望に対し、小池都知事は「練馬区のみなさまと連携し、検討していく」と意向を示しています。
――今年3月には、練馬区内で大江戸線延伸やまちづくりに関するオープンハウスが開催されました。
原田 参加者の方々からは、早く事業化してほしいという声が多数ありました。練馬区は、1988年には延伸地域の町会や区議会などで構成する「大江戸線延伸促進期成同盟」を設立し、延伸促進大会の開催や国や東京都への働きかけを行っています。練馬区、また地域住民の長年の悲願が、あと一歩で達成できそうな状況です。
大江戸線延伸地域は農地や大規模な公園が多く、多様なみどりに囲まれています。この特色を生かし、都市の利便性とみどりが共存する魅力あふれる住宅地の形成に向けて、まちづくりに取り組んでいます。駅前広場を整備し、商業・サービスなどの施設の立地や、周辺土地利用の計画的な誘導も進めていきます。すでに土支田中央地区では土地区画整理事業を施行し、道路などの整備を行い、駅前広場用地を確保しています。また、土支田中央地区、土支田・高松地区、大泉町三丁目地区では地区計画を決定しています。
(構成=長井雄一朗/ライター)