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東京・住み心地ランキング、港区・渋谷区・中央区のトップ3に納得感しかない理由

文=A4studio
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東京・港区のHPより

 8月16日に不動産情報サイト「SUUMO」が出している冊子「SUUMO新築マンション首都圏版」で、「東京23区住み心地ランキング」が発表された。このランキングは、評価項目ごとにランキングをつけているのだが、これを基にあるTwitterユーザーが各評価項目を偏差値化した総合値ランキングを制作し、9200以上の“いいね”を集めていた。そのTwitterユーザーのデータによると、住み心地の総合値ランキングは1位「港区」、2位「渋谷区」、3位「中央区」となったようだ。

 この結果を受けてSNS上では「今まで住んだ場所で一番港区が住みやすかったので納得感がある」「都心3区、ズバ抜けているな」などといった納得の声が多くあがっており、土地や賃貸の価格が高い高級エリアならではの確かな良さがある様子。

 そこで今回は、不動産鑑定士の竹内英二氏に、この総合値ランキングになぜ多くの人が共感しているのかを解説してもらった。

多少の疑問点はあれ、おおむね納得の評価項目で作られたSUUMOのランキング

 まずはSUUMOの「東京23区住み心地ランキング」が、どのような基準で選ばれているのかについて教えていただこう。

「SUUMOの『東京23区住み心地ランキング』は5つの項目から導き出されています。1万人あたりの小売店数と飲食店数を換算した『生活利便性』。持ち家世帯の通勤時間と1平方キロメートルあたりの人口密度を換算した『住環境』。1万人あたりの病院・診療所数を換算した『医療環境』。1人あたりの公園面積と15歳未満の子どもの人口割合を換算した『子育て環境』。そして1万人あたりの交通事故件数を換算した『安全性』。この5項目です」(竹内氏)

 そのうえで竹内氏は気になる点を指摘する。

「『生活利便性』に関する部分です。小さな個人商店も、イトーヨーカドーやイオンなどの大型スーパーマーケットも、同じ1店舗として扱っているようなので気になりますね。そういった大型店舗は、数字上は1店舗でも住民にとって、あるかないかで利便性は変化しますからね。また小売店・飲食店に活気があるか否かが見えづらいのも気になりました。たとえ数が多くても店が広範囲に散らばっていては利便性を感じづらいもの。逆に、谷中銀座商店街や戸越銀座商店街のように、活気のある店がギュッと集まった商店街があれば、それだけで利便性はぐっと上がるわけです」(同)

 とはいえ、この評価項目が基準になっていることは、おおむね適正だと竹内氏。では次にTwitterユーザーが作成した総合値ランキングについて。

「総合値でトップ3となった中央区、渋谷区港区は、確かに小売店や飲食店が充実していますし、住宅地と駅までの移動距離もほとんどが十数分以内でおさまるので、住みやすいのは間違いないでしょう」(同)

中央区、渋谷区、港区はなぜ住み心地が良いのか

 ここからは、住み心地の良い理由を解説していこう。まずは3位に輝いた中央区だ。

「中央区というと、多くの人が高級ショッピング街である銀座や日本橋といった場所をイメージするでしょうが、隅田川沿いの勝どきや月島といった場所は、タワーマンションなども多く建つ住宅地で非常に住みやすいです。

 また、2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村を利用して作られた、大規模マンション群の『HARUMI FLAG』も注目です。大規模商業施設や広々とした公園が併設されているほか、新橋や虎ノ門にダイレクトアクセスできる『東京BRT』といったバスシステムも作られているので、交通の便も悪くないため通勤は楽でしょう」(同)

 次は、2位にランクインした渋谷区。渋谷センター街などが有名なこともあり、繁華街としてのイメージが強い印象だが、住み心地はどうなのだろう。

「確かに都心の繁華街のイメージが強いですが、一歩奥に入ると政府の要人や有名人などが多く住んでいる、日本屈指の高級住宅地である松濤や神山町などがある区でもあります。このあたりは渋谷駅から徒歩圏内ながら、渋谷センター街の喧騒が嘘のように静かで、落ち着いた雰囲気のなか暮らすことができます。

 一方で、遊びたければそれこそ渋谷センター街や、渋谷スクランブルスクエア、渋谷ヒカリエなどの大きな駅周辺の商業施設もありますし、裏路地を探索すれば古くからある名店なども見つけることができます。繁華街の安全性は少々気をつける必要がありますが、住宅地の安全性はかなり高いです」(同)

 では、1位に輝いた港区の住み心地ポイントについて。

「港区は、多くの大企業などが本社を構えているビジネスエリアのイメージがあると思います。ですが、芝浦あたりの湾岸エリアは緑も豊富でタワーマンションがいくつも建ち、住環境は良好です。また、白金や高輪には有名私立校が集まっており、安全性の高い高級住宅地としても知られていますよね。麻布十番商店街には活気に満ちた小売店・飲食店がいくつもありますし、新橋駅周辺まで行けば美味しい居酒屋なども揃っています」

住み心地の良さを測るなら、住宅価格・賃貸価格の安さは加味しないほうが良い?

 今回の総合値ランキング、そしてその基となったSUUMOのランキングは、住む際に大きな基準となる「住宅価格の安さ」を判断基準に加えていない点を理解しておくべきだろう。経済的に余裕があるのであれば港区、渋谷区、中央区に住みたいけれど、住宅価格も賃貸価格も高すぎて、現実的な選択肢に入らないという方は多いはずだ。

「『住みたい街』と『住める街』が違うというのは、そのまま収入事情につながっていますので、確かに多くの人が『お金があれば渋谷区とか港区に住みたいよ』となるでしょう。住み心地という点で評価するのであれば、住宅価格や賃貸価格の安さを考慮しないSUUMOのランキングは、かなり実情に即していると思います。

 一方、日本最大手の住宅ローン専門金融機関のARUHIが発表している『本当に住みやすい街大賞』というランキングでは、SUUMOのランキングのような評価項目に、住宅価格や賃貸価格の安さを加味したコストパフォーマンスを追加しています。ですが、これが毎年発表されるたびにSNS上で物議を醸しているのです。今年のランキングでは3位に東京都町田市の『多摩境』がランクインしているのですが、SNSを見ると多摩境に住んでいるという人が『多摩境がなんで3位なの?』と驚いていたほど。このように土地の価格や賃貸物件の家賃といった金額の低さからコスパで割り出そうとすると、本来の住み心地の良さが霞んでしまう気がするのです」(同)

 住む場所選びで一番気をつけてほしいのは環境だという。

「不動産業界で引っ越しは『建物ではなく環境を買う』ともいわれています。自分が住む建物ばかりに目がいってしまう人も多いかもしれませんが、それと同等かそれ以上に重要なのが周辺環境なのです。ですからSUUMOのランキングは確かに住むための値段の安さが度外視されていますが、それ以外で考えれば住環境の参考になる意義あるランキングだと感じます」(同)

 要するに住み心地の良さは、土地の価格や賃貸物件の家賃といった金額に比例するということだろう。少々夢がない結果だが、住みやすいからこそ値段が高くなるわけで、市場原理で考えれば当然といえば当然。「毎年あまり代わり映えしない」と指摘されることもあるSUUMOのランキングだが、それだけ現実に即しているということなのかもしれない。

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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