2014年、元総務大臣の増田寛也氏が座長を務める日本創成会議が、消滅可能性自治体を発表し、市町村長や地方自治体議員・職員をはじめ、自治体関係者に大きなショックを与えた。通称、増田レポートでは、「2040年までに日本国内896の市町村に消滅可能性がある」とされた。
日本国内の少子高齢化は急速に進んでいる。過疎化により、自治体の行財政が破綻し、実質的に行政が機能していない地域も出始めている。子供が急に増えることはない。子供の数は出産適齢期の女性から推定できてしまうため、30年後の人口動態はわりと予測が可能だ。そうした30年後の人口動態から類推すると、増田レポートを単なる妄想と一笑に付すことはできない。
消滅可能性があるとされた自治体の多くは、少子高齢化・過疎化に深刻に悩まされていたが、大都市圏にある自治体も挙げられた。いまだ人口が増加し、経済的にも発展を続ける東京23区の豊島区もそのひとつだ。896の自治体のうち、豊島区は東京23区内では唯一リストアップされた自治体。若者が多く闊歩する池袋などを擁し、一般的に少子高齢化・過疎化といったイメージからは遠い。ある豊島区職員はいう。
「増田レポートが発表された直後、庁内は騒然となりました。『もっと厳しい自治体があるのに、なぜ豊島区が消滅するのか?』『豊島区の実態を見ていない。机上の論理』といった怒りに似た声もたくさんあがりました。しかし、怒りをブツけても現状が改善されるわけではありません。そこで、豊島区は増田レポートと真摯に対峙し、人口減少につながり得る要因を探り、ひとつずつ人口減少に対処する政策に取り組むことにしたのです」
サード・プレイス=南池袋公園
豊島区の平日は、池袋を中心に働く人々が多く集まり、週末は若者でにぎわう。玄関口でもある池袋駅は、JR・西武・東武・東京メトロが乗り入れており、練馬区・板橋区や埼玉県などから通勤・通学している人も多い。池袋駅前に立てば、この街が消滅可能性を秘めているなどと微塵も感じない。
しかし、日本全国の人口減少が今後も続くことは確実であり、豊島区の人口が減少することは間違いない。豊島区の活況を維持するためにも、人口増につなげる対策は必要だった。そして豊島区が結論として位置付けたのが「若い女性への訴求」(前出・豊島区職員)だった。