「それまでの公園整備は緑化・美化といった部分に光が当たり、交流スペースという機能が見落とされがちでした。2003年に指定管理者制度が開始されると、公園を有効活用する機運が強まります。そこで注目されたのが、“公園の経済非効率性”です。公園は維持費が財政に重い負担になっているという見方が支配的になり、そうしたことから公園のオープン化が進められました。経営や管理を民間事業者に任せて稼げるコンテンツにする動きが強くなったのです」
指定管理者における公園の民間委託化は、公園がテーマパーク化してしまう恐れがあったが、行財政負担を軽くしたいという自治体側の思惑から公園にはこぞって指定管理者が導入されていった。
しかし、テーマパークと公園は役割が異なる。テーマパーク化した公園は、利用者の足を遠のかせてしまう可能性もあった。そうした公園のテーマパーク化を回避するべく、南池袋公園では指定管理者を入れず、行政主導で公園の整備・管理・運営に当たった。同公園内には一店舗だけカフェが営業しているが、それを除けば公園内に民間の施設は見当たらない。
指定管理者を入れて、公園内に商業施設をつくれば区は荒稼ぎすることができる。しかし、それは公園の周囲にある商業店舗の需要を食っているにすぎない。公園単体で稼いでも、周囲の街のお店が廃れてしまえば、街全体の活気が失われることにつながる。それでは、せっかく公園を整備しても意味がない。
豊島区は南池袋公園で稼ぐという発想をやめ、とにかく人が集まれる、集まりやすい仕掛けをつくることに専念。お母さんと子供が、昼下がりにぶらっと来園できることを理想とした。それが周囲のカフェやレストランとも見事にマッチングした。公園はにぎわいを取り戻すことに成功し、そのにぎわいは周辺にも波及。今年に入っても集客力は衰えず、公園の隣接地にはサードウェーブコーヒーで話題を集めたブルーボトルコーヒーも出店。南池袋公園が池袋経済を活性化させている。
同公園の成功を受け、豊島区では人の集まれる場所づくりが加速している。池袋駅の隣にある大塚駅の駅前広場整備にも着手した。駅前広場も人が集まれる仕掛けのひとつであり、ここでも民間事業者による指定管理者を入れていない。
消滅可能性自治体にリストアップされたことは、豊島区にとって大きなピンチだった。しかし、豊島区はそのピンチをチャンスへと変えた。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)