豊島区では、若い女性をターゲットにした「女性にやさしいまちづくり担当課」を新設。同課は、若い女性を呼び込むとともに、結婚・出産・育児中の女性でも引き続き豊島区に住みたいと思われるような区の魅力づくりに取り組むことが目的にあった。ただ、女性にやさしいまちづくり担当課といっても、イメージは漠然としている。それをどうやって政策に反映するのか。当初は、戸惑う職員も少なくなかった。
同課は、女性の呼び込み政策としてコミュニティの形成・強化に焦点を絞り、そのために取り組んだのが、集会・交流機能のある公園づくりだった。その目玉として、池袋駅から徒歩5分の場所にある南池袋公園が再整備された。区庁舎からも近い南池袋公園は、園内が鬱蒼とした樹木に覆われていた。よくいえば自然豊かだが、悪くいえば陰気な雰囲気といった公園だった。同公園は決して広大ではなく、敷地面積の規模は中クラス。それゆえに、区内でも目立った存在ではなかった。
豊島区は、住宅(ファースト・プレイス)と職場や学校(セカンド・プレイス)に次ぐ、第3の場所を意味するサード・プレイスに南池袋公園を位置付けた。2016年にリニューアルオープンした南池袋公園は広場機能を強く打ち出し、とにかく自然に人が集まりやすい環境の整備に重点を置いている。
人の集まれる場所づくり
集まりやすい公園という評判は瞬く間に広がり、南池袋公園には区民のみならず区外からも来園者が増えるようになる。そして、近隣自治体からも南池袋公園のような公園をつくろうという声が相次ぐようになる。豊島区に隣接する新宿区の職員もこう話す。
「わが新宿区には、区内に大きな区立公園がありません。新宿御苑は環境省の管轄ですし、そのほかも都立公園です。そのなかでも、比較的大きな区立公園が新宿中央公園です。その新宿中央公園は工夫を凝らし、区民の憩いの場になるよう整備を進めています。そうした公園づくりのモデルケースにしているのが、豊島区の南池袋公園です」
新宿区のほか、住民が急増中の江東区や従来からベッドタウンといった趣が強い足立区、そのほか23区外の多摩エリアの自治体職員からも目指すべき理想の公園像として南池袋公園の名前が挙がることは珍しくない。
南池袋公園の名前を口にするのは、公園の担当部署だけではない。都市計画・都市整備、福祉など幅広い部署から、南池袋公園を参考にしているという声が伝わってくる。また、役所だけではなく、学校関係者やNPO団体などからも南池袋公園の名前が挙がる。
前出の豊島区職員はこう話す。