(前編はこちら)
少し前、神戸山口組の最高幹部が、分裂問題の解決に向けて水面下で、ある動きを見せているのではないかと囁かれていたことがあった。六代目山口組が神戸山口組の存在を認めていない以上、その“動き”とは、必然的に神戸山口組の解散を意味するのだが、今もそれは現実のものとはなっていない。その理由として考えられるのが、神戸山口組・井上邦雄組長の強い意向によるものだと考えられる。
「井上組長は、たとえ1人になっても神戸山口組を解散させるつもりはない、という考えを持っているのではないかと言われています。また、それに近い考えを持っていると見られているのが、神戸山口組副組長である二代目宅見組・入江禎組長です。ただ、その2人にしても、現在の心境は微妙に違うのではないかと話す関係者らがいるようです」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
それはどういう意味か。先の関係者は続ける。
「あくまで業界内の噂ですが、例えば神戸山口組から離脱した池田組・池田孝志組長との関係をとっても、入江組長は池田組長を敵対視しているわけではないと見られている。一方で池田組長は絆會・織田絆誠会長と親密だといわれている。織田会長は井上組長を批判して神戸山口組を割って出たわけですから、井上組長は池田組長にいい感情を抱いていないのは明白ではないでしょうか。これだけを見ても、現在の2人は、微妙に立場や考えが違うのがわかるのではないでしょうか」(同)
こうした話が、どれだけ信憑性の高いものかはわからないが、そうしたさまざまな人間模様がある中で、先ごろ神戸山口組の首脳陣らが、武闘派として知られる某独立組織を訪問したのではないかといわれている。
「これまでも、山口組以外の他団体が集まって、分裂問題の解消に向けて、当事者たちに働きかけるのではないかと噂されたことがあった。その中心とも見られていた武闘派組織を、先日、井上組長や寺岡修若頭(神戸山口組若頭であり俠友会会長)が、他組織の関係者らと一緒に訪れたのではないかと囁かれている」(業界関係者)
ただ、そこから聞こえてきたものは、神戸山口組の解散といった具体的な話ではないようだ、とこの関係者は付け加えた。
では、今後どうした展開が予想されるのか。ある捜査関係者はこのように話す。
「例えばだ。これまで暴力団対策法の規定により指定暴力団として公示されていた某組織が、組員の減少、組織の縮小などでその条件を満たされなくなるのではないかといわれていたりする。神戸山口組もご多分に漏れず、いくら井上組長が頑なに解散や自身の引退を拒んだとしても、組織の弱体化がさらに進めば、そういうことも考えられるのではないか。あくまで、今後の話としてだが……」
そうした中でも、六代目山口組サイドの活動は表面化していないだけで、今も緩めることなく続けられていると話す関係者もいる。神戸山口組とともに特定抗争指定暴力団に指定されたことによる活動制限はあるものの、分裂前と変わらない状況をすでに取り戻しているというのだ。
8月を迎えれば、まる7年を迎えることになる山口組の分裂問題。あの夏、何の前触れもなく起きた山口組の分裂は、そう遠くないうちに突然、幕を下ろすこともあるのだろうか。山口組の象徴でもある、神戸市灘区にある山口組総本部は、現在も使用制限がかけられており、ひっそりと静まり返ったままとなっている。
7年前に起きた神戸山口組の発足は、結果として、山口組やヤクザ社会に何をもたらしたのだろうか。
(文=山口組問題特別取材班)