12月に中旬頃、業界の一部では不穏な噂が流れていた。それは、絆會のある幹部が周囲との連絡を突如絶ち、消息不明状態になったというのである。さらに同幹部は、カタギなることを選び、そのことを誓約する一筆を書いたのではないかと噂される事態になっていたのだ。
「事実関係はいまだ不明ですが、その幹部は12月13日に行われた絆會の会合にも欠席していたようです。その背景には、六代目山口組系組織から引き抜きがあったのではないかとの情報もありました」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
つまりはこの幹部は、絆會から六代目山口組系へと復帰するか、もしくはカタギになるかの選択を迫られており、その最中、消息を絶ったというのである。
ただ、こうしたことは山口組分裂後、珍しいケースではない。六代目山口組から袂を分かった神戸山口組や絆會の組員が六代目山口組に復帰したり、引退してカタギになったりといったケースは、特に分裂騒動において六代目山口組が圧倒的有利に立ってからは続出している。
しかし、そんな中で、茨城県で起きた事件がまさかの展開を迎えることになったのだ。
六代目山口組分裂後、一時は六代目山口組と神戸山口組の間で激しい攻防戦が繰り広げられはしたものの、六代目山口組サイドに死者は出ていなかったのだ。
ところが、昨年暮れに六代目山口組系組織と絆會サイドで、前述した移籍問題に端を発したのではないかと見られる事件が発生。さらに1月17日には、茨城県水戸市で、同じ六代目山口組系組織の幹部が事務所内で射殺されるという事件が起きてしまったのだ。
「撃たれたのは六代目山口組系三次団体の若頭。逃走した犯人は、事務所近所の店で買い物をし、客を装って事務所へと訪れたようだ。そこで、事務所で応対しようとした若頭の腹部を撃ち、もう一発は頭部へと発砲している。この組織と絆會系組織が昨年末も衝突している。今回の件も含めて、絆會幹部の移籍に関係するトラブルではないかと見られる」(捜査関係者)
その後、犯人は拳銃二丁を事務所内に捨て去り逃走。現時点ではまだ逮捕されていない。この事件について、業界関係者はこう話す。
「幹部や組員の移籍にまつわるトラブルは、業界内でも組織間の摩擦が生じやすいといわれている。山口組分裂時、最初に死者を出した長野県でのトラブルもやはり移籍にまつわるものだった。ただ、ここへ来て、六代目山口組系の幹部が射殺されるとは、誰も予測すらできていなかったのではないか」
分裂後、初めて六代目山口組系幹部に死者が出たのだ。それだけに緊張感がみなぎっているのは間違いない。最近は沈黙が続き、終息に向けて進んでいたと思われていた分裂問題だが、今回の事件が報復の連鎖を引き起こすような事態を招かないだろうか。予断を許さない状況が続いている。