高校野球の名門に何があったのか――。2021年春の選抜高等学校野球大会に出場し、一回戦で東海大菅生との激戦に敗れた聖カタリナ学園高(愛媛県松山市)野球部が先月31日から、部員間トラブルで活動を停止したことがわかった。地元紙・愛媛新聞が1日、記事『聖カタリナ学園野球部が活動停止、部員間で暴行行為か』でスクープした。7月7日に開幕する全国選手権愛媛大会への出場については「検討中」という。
同新聞は匿名の関係者談話を踏まえ、以下のように報じた。
「5月に野球部の寮で寮生の複数の1、2年生部員が1年生1人に集団暴行し、顔などにけがをさせた。学校側は寮を閉鎖して寮生全員を自宅待機させ、下旬に野球部の保護者説明会を開いたという」
2019年には監督、コーチによる暴言事件も
高校野球取材歴の長い全国紙スポーツ部記者は話す。
「聖カタリナ高は19年に発生した不祥事を乗り越えて、昨年、春の選抜への出場を果たしただけに、“不祥事の再発”はかなり痛いと思います。特にプロ・アマチュアを含めて球界は『暴力の追放』に力を入れています。どんな状況だったのかは現地支局が取材の中心になっていますが、甲子園出場辞退となれば、東京や大阪などから記者が行く事態になるかもしれません」
同記者の話す19年の不祥事とは、同年1月にやはり愛媛新聞の報道で発覚した「同野球部の監督、コーチによる暴言、暴行問題」だった。前述の記者は説明する。
「学園は当初、部活内の問題を把握していなかったのですが、外部通報で発覚しました。学校が聞き取り調査をしたところ、監督、野球部長、コーチの3人が17~18年、複数の部員に対し『お前など必要ない』『ボケ』などと暴言を浴びせたというものです。
一方、部員からは『胸倉をつかまれた』などという証言もあり、部の活動を自粛しました。日本学生野球協会は暴力、暴言報告義務違反があったとして同年3月5日、暴力と暴言で監督を謹慎7カ月、暴言で部長の教諭とコーチを4カ月の謹慎とする処分を下しました。コーチは問題発覚後、すぐに依願退職しています。
愛媛は春の選抜常連の済美、今治西、西条などの強豪がひしめく地域です。聖カタリナ高は近年大きく躍進し、その一角を占めるようになりました。
今回の件は部員間のトラブルという報道で、監督者の学校の管理外で起こった事件というように見えます。しかし他の高校でもあることですが、いったん野球部に根付いてしまった体罰を含む暴力や暴言の伝統は、監督やコーチといった大人が変わっても、生徒たちの間で残り続けることは多いです。ぬぐい去るのは難しく、どこの学校も苦労しています。
今は強い選手を育成すること以上に、野球を通じた教育の大切さが求められています。豊かな才能に恵まれた球児が伸び伸びと全力を尽くすことができる機会と、場所が失われないといいのですが」
球児たちが暴言や暴力の被害に遭うことを防ぐことはもちろん、それぞれの選手としての将来が閉ざされるような事件が繰り返されてはいけない。学校による原因究明と有効な再発防止策の立案が待たれる。
(文=Business Journal編集部)