イスラエル政府中央統計局は10日、2月24日から始まったウクライナ戦争で、同国に移住したロシア人とウクライナ人の移民総数を発表した。2021年の移民統計の中で特筆した。
同発表によるとウクライナ、ロシア両国の移民総数は3万1066人。前年同期比の両国の移民数の数倍に激増した。しかも、ウクライナよりもロシアからの移民が多いという結果になったのだという。
同発表に付属されていた「一週間ごとの両国の移民者数」のグラフを以下、引用する。緑の折れ線がロシア、青がウクライナを示している。
イスラエル中央統計局『Immigration to Israel 2021 and Immigration to Israel due to the War in Ukraine in 2022』より
ウクライナからの移民は3月に1800人の大台に乗ってピークに達した後、下降に転じた。一方で、ロシアからの移民は1000人を超える週が目立ち、7月に入ってようやく減少に転じた。
プーチン政権下から逃れるロシアからの移民が相次いでいる?
イスラエル中央統計局によると、ウクライナからの移民の大半は女性で、男性は少数だった。戦争中の18~60歳の男性が同国を離れられないことが原因とみられる。一方で、ロシアからの移民は「男女の割合は均等だった」という。米経済誌記者はこの現象について、次のように語る。
「開戦当初、ロシアから高等教育を受けたテック系の人材や、富裕層が(ロシア隣国で西側諸国とも交流のある)ジョージアや、ウクライナ―ロシア間の外交交渉で仲介役を務めるトルコなどに脱出する事例が相次ぎました。イスラエルもその選択肢のひとつでした。
例えば、西側の文化に慣れ親しんでいたロシア人が、国内の言論統制や今回の戦争に疑問を持って国を離れることを決心したとします。しかし、相互制裁で空路が途絶えている米国やNATO(北大西洋条約機構)諸国に移民すれば、プーチン政権が存続する限り、“祖国に残した親族に会いに一時帰国”というのは難しくなります。そのためイスラエルなどが行先に上がってくるのだと思います。国民の流出は社会や経済にとって甚大な損失です。ロシアも少なからず戦争の打撃を被っているということだと思います」
(文=Business Journal編集部)