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被災地復興予算、なぜ1.4兆円が無関係事業に流用?一部は東電救済に充当の可能性も

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 例えば、「森林整備加速化・林業再生基金」では、1兆2000億円が東京、神奈川を除く45道府県に配分されていた。農林水産省は被災地の住宅再建に木材が必要としているが、そのために全国に林道整備が必要になるのだろうか。また、報告書では、復興予算の23.7%(約4兆5000億円)が未消化だったこともわかった。12年度までに執行された復興予算は全体の77.2%に当たる15兆3664億円だった。

●東電救済に充当の可能性も

 注視すべき点は、未消化である4 兆5000億円あまりのお金がどこに使われるのかである。自民党の東日本大震災復興加速化本部(大島理森本部長)は10月29日、第3次提言をまとめ、その中に東京電力福島第一原発周辺の除染費用に対する国費投入を盛り込んだ。除染費用には復興財源約4兆5000億円から充てる方針だという。廃炉関連費用を含めると10兆円を超えるとの試算もあるが、財源をどこから捻出するのかは不透明なままだ。

 現在、除染は国と自治体が行い、その費用全額を東電が負担することになっている。これは除染特別措置法第44条の「原子力事業者の負担の下に実施」という一文が根拠となっているが、これまで原発処理の基本原則であった「東電が全額負担」という方針を180度転換することになる。環境省は除染費用につき4回にわたって計404億円を東電に請求したが、同社は67億円しか払っていない。東電は返済が遅れている分だけでなく、数兆円に及ぶことが予測されている将来の負担についても「返済を拒否する」方針を政府に伝えていた。東電の取締役は政府に対し、「土地や建物の価値が減った分の賠償は行っている。ここに除染が含まれており、二重払いになる」ことを強調しているという。

 政府が進める事故処理の枠組みでは、東電に5兆円を上限に公的資金を貸し出すことが決まっており、すでに3.8兆円を実行されている。提言が出されるまでのこれまでの経緯をたどると、東電は経済産業省に対し、負担は10兆円規模になるとの理由で全額免除を求めた。経産省は「汚染水の処理などに悪影響を及ぼす」として理解を示したが、財務省は「全額負担が法律に明記されている」ことから、国費負担に反対している。結局、復興加速化本部が妥協点を検討し、計画済みの除染は東電、住宅地や公園造りなどのその後の公共事業と一体で行える除染は国費として負担する案に落ち着いたが、つまるところは東電救済を目的とした税金投入の意味合いが強い。しかもその救済費用を復興財源から捻出することが検討されている。被災地に復興財源が使われることは当然であるが、今後膨らんでいくことが予想される除染費用に対する金額は不明確なままだ。まして現行法を無視したかたちで支払いを拒否している東電の姿勢が、国民の理解を得られるとは考えにくい。

 震災復興予算が目的とは無関係な事業に投下され、さらに巨額の国費が東電救済に充てられるとしたら、世論の反発は必至といえよう。
(文=山口安平/ジャーナリスト)

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