「私は高校生まで養護施設で生活していました。忠実に再現されているとは思います」(養護施設出身者)
●タレントからも積極的な発言
このように一般視聴者の間から賛否両論の声が上がる中、時に出演番組が批判の対象となりかねないタレントからも積極的に発言がなされている。
例えば、「はるかぜちゃん」こと女優でタレントの春名風花は自身のTwitterで「完全にドラマの解釈を間違えている『観る力不足』による誤解」と発言。続けて「ポストは、ポストという名前に誇りを持って生きてる。それを『かわいそう~』といって見下す行為は、あのこの出生を、存在を、まるごと否定するに等しい行為だ」と、同ドラマへの批判に反論している。
また、タレントの吉木りさもSNS上で「想像をはるかに超えた真に迫る“言葉の伝え方”に脱帽せざるを得ませんでした」と感想も漏らしている。
このほかにも、お笑いタレント・岡村隆史(ナインティナイン)は、1月24日1:00~放送のラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に出演し、「もし、これで本当に放送中止になってしまったら、もうテレビの未来はないです」と懸念を表した。お笑いタレント・松本人志(ダウンタウン)も出演した1月28日0:50~放送のテレビ番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)内で、「もし『はい、やめます』ってなっちゃったら、『クレームしたら番組終わらせられるんだ』っていうのができちゃうと、どんどんつくり手はやりにくくなってくる」と危惧を口にした。普段からバッシングの対象になりやすいバラエティ番組で活躍する人気タレントたちも、一連の騒動を受け、「クレームと規制の問題」に敏感になっている様子がうかがえる。
同ドラマはフィクションのため、現実の児童養護施設とかけ離れている部分もあるのは確かだろう。しかし、「恩寵園事件」(1995年に発覚した児童養護施設内での虐待事件)といった悲惨な事件が、ドラマではなく実際に起きているのも事実である。多くの児童養護施設では虐待などなく、職員も懸命に働いているだろう。今回の一連の問題をたんに騒動として終わらせるのではなく、親と離れて暮らす子供たちにとってかけがえのない受け皿である児童養護施設をめぐる現状や在り方について、より建設的な議論に発展させることが求められているのかもしれない。
1月15日に放送された同ドラマの第1話内では、赤ちゃんポストに預けられたという設定の子役に「ポスト」というあだ名がつけられたり、施設長が「お前たちはペットショップの犬と同じだ」という言葉を子役たちに浴びせたり、子役たちを平手打ちにするなどのシーンも見られた。この放送を受け、翌16日に慈恵病院は記者会見を開き、蓮田健・産婦人科部長は「施設の現状を知る視聴者は少ない。フィクションと言っても誤解されかねない」「同じ立場の子どもが聞いたらどれだけ傷つくか」などと、同ドラマを批判。日本テレビに放送中止と謝罪を求めた。さらに20日には、約600施設が加盟する全国児童養護施設協議会と全国里親会も、同局に抗議文を送付したが、現時点で同局は番組継続を表明しており、波紋を呼んでいる。
また、同ドラマ第1話の平均視聴率は14.0%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)であったが、22日放送の第2話では13.5%(同)へ低下した。脚本監修は、過去に『高校教師』(TBS系)や『家なき子』(日本テレビ系)などに関わった人気脚本家・野島伸司氏が担当している。
(文=成田男/フリーライター)